🔭コラム「ポケモンGOで考える著作権法」

 世界的にヒットし社会現象ともなっているスマトフォン向けゲームアプリの「ポケモンGO」は、歩きスマホや深夜徘徊を助長するなどのデメリットがニュースとなったりしていますが、子供時代パソコンゲームに夢中になり過ぎて、親にセーブ途中のパソコン電源コードを引っこ抜かれた腹いせに家出をした経験を持つ、ごく普通の(?)ゲーム好きの自分としては、画期的なゲームだと受け止めています。
 何しろ、このゲームのせいで、親は子供に対して「ゲームばかりしてないで外で遊んできなさい」と言えなくなってしまったのです。
 もちろん、携帯ゲーム機の登場によって、外に出てもゲームはできるようになっていますが、実態としては部屋でやっていることをそのまま外に持ち出しただけで、部屋でゲームをし続けることは可能ですから、ゲームとアウトドアを結びつけるものではありませんでした。
 そのため、ゲームに対するネガティブな意見として「部屋に閉じこもってしまい、外に出なくなってしまう」「運動不足になり易い」といったものがあったわけで、これらの意見は、「子供は外で遊ぶべき」という教育論からスタートし、「外に出なくなるゲームは悪」というレッテルを貼られてしまう原因になっていたわけですから、これらの否定的な見解を一掃する効果があるのではないかと思います(実際に、自閉症の子供が外に出てコミュニケーションを取れるようになったという海外のニュースもありました)。
 すなわち、外に出ないとゲームができないという、ゲームをアウトドアに結び付ける画期的な効果をもたらしたのが「ポケモンGO」だと思うわけです。
 なお、ゲームとアウトドアを結び付ける試みは「ポケモンGO」が初めてというわけではなく、2000年初頭に、任天堂の携帯用ゲーム機「ゲームボーイアドバンス(以下GBA)」向けの「ボクらの太陽(海外名boktai)」というコナミから発売されたRPGソフトが先駆として存在します。
 これはゲームカートリッジに太陽光を検知するセンサーを内蔵しており、
太陽光を受けてゲームをすることでゲーム内に様々な影響を与えるというシステムが特徴的で、持ち運びができる携帯ゲーム機の特性を生かしたゲームだったのですが、ゲーム機が「ニンテンドーDS(以下DS)」に世代交代してから、太陽光センサーが廃止され、普通のゲームになってしまいました。
 この太陽光センサーが廃止された正確な理由は明確にはされておらず、DSがカード型のスロットとなりセンサーを付けることができなくなったためという説もありましたが、初期のDSにはGBA用のスロットもあり、太陽光センサーも実際に使用できたようなので、やはりゲームのプレイが特定の時間帯に限られるというシステムが販売層を制限してしまうネックになったのかもしれません(本当に太陽光でないとダメらしく、日中でも部屋の中ではダメで、たとえ屋外でも日陰では反応しないそうです)。
 その点、ポケモンGOはプレイ時間が拘束されることもなく、またGPS(Global Positioning System 全地球測位システム)による位置情報をうまく活用して、現実の世界を舞台にプレイするという、太陽光とは別のロジックでゲームユーザーをアウトドアへと繋げました。
 ポケモンGOのゲームシステムは、ユーザーがポケモントレーナーとなって、ポケモンをひたすら収集し、集めることで育てていくことで、壮大なオリエンテーリングをやっているようなゲームです。
 ポケモン自体は全国どこを歩いても遭遇する可能性があるのですが、全国に設置されたポケストップという拠点に近づくと、ポケモンを捕獲するための様々なアイテムを入手することができます。
 ポケストップは、名所・旧跡などの有名な建造物だったり、有名でなくても特徴的な看板や彫刻といった場所に配置されていて、ここにこんなモニュメントがあったのかと、ただ散歩していても気づかなかったような新しい発見があったりします。
 さて、このポケストップですが、建造物やモニュメントの写真が取り込まれて表示されています。
 被写体である建造物やモニュメントは著作権がすでに切れているものも多いでしょうが、著作権がまだ存続している場合には、著作権法46条が適用されることになります。
 すなわち、建築の著作物と、一定条件下の屋外の場所に設置されている美術の著作物の2種類については、一部の例外を除き、自由に利用できるというもので、ゲームの写真として使う場合はこの例外には該当しません。
 ただし、いくつか引っかかってくる微妙なケースがあると思われます。
 まず1つは、明確に自由利用が認められるものとして規定しているのは、建築と美術の著作物のみということです。
 言語や音楽の著作物は列挙されていないので、彫刻ならいいのですが、
句碑とか歌碑のような場合は、そこに記されている俳句や歌詞は自由に利用できるわけではありません。
 もちろん俳句や歌詞を勝手に本やサイトに転載するというのは認められるべきではないでしょうが、句碑や歌碑を写真撮影したものをポケストップの表示としてアップしたりするような、碑と一体化した形での利用は彫刻などの美術の著作物と同様に認められるべきではないかと思います。
 次に、美術の場合に自由利用が認められる一定条件下の屋外として、「街路・公園その他一般公衆に広く開放された屋外の場所」「建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所」の2つが規定されていますが、立法担当者である加戸守行先生の『著作権法逐条講義』では、この建造物の外壁には
「ショウ・ウィンドウ」は建造物の内部であって含まれず、ショウ・ウィンドウのガラス越しに美術作品が展示されている場合には、自由に利用することはできないとされています。
 ポケストップの中には、このショウ・ウィンドウのように見えるものもありますが、先程の句碑・歌碑の場合と同様に、ショウ・ウィンドウを含めた外壁として撮影しているようなものについてはその形での一体化した利用は認められるべきではないかと思います。
 また、これは多くの解説書で指摘されているポイントですが、美術の著作物の自由利用が認められるのは原作品が設置されている場合のみで、原作品ではないレプリカが設置されている場合には適用されないという点です。
 原作品となっているのは法技術上の理由によるもので、複製物の場合も含めて解すべきとする説もありますが、明文上原作品が設置されている場合と規定されているので難しいところです。
 個人的には、多くの解説書で指摘されているように、利用する側が原作品とレプリカとを見分けて利用制限を判断するということは不可能に近いので、複製物も含まれると解すべきではないかと思います。
 一方で、この46条では、違法に建築されたり、展示権を侵害して設置されたりした場合が明文で除外されていません。
 従って、理論上は、違法に設置された彫刻を撮影したポケストップの写真は、たとえ著作権侵害としてその彫刻が撤去された後でも利用継続が可能ということになります。
 実際には存在しないポケストップになるので、いずれ写真も変更されることになるでしょうが、変更されなければ著作権侵害にもなり得るとの解釈にすべきなのではないかと思います。
 以上の話はポケモンGOに限らず、プログやインスタグラムへの写真のアップなどでも同様に起こり得る問題と言えます。
 実際に紛争にまで発展した場合には、おそらく権利者側の黙示の許諾や権利濫用といった観点から利用を認める方向で判断されることも多いと思われますが、双方向性の技術が発達してきたネット社会においては、そろそろ規定の見直しも考えてもよいのではないかと思います。
(RC 平山太郎)