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日程
2016年7月23日(土曜日) 13時00分~18時00分 
会場
早稲田大学早稲田キャンパス 3号館402教室
主催
駐日韓国大使館
早稲田大学 知的財産法制研究所(RCLIP)
言語
日韓同時通訳
参加費
無料

開会挨拶

菊池馨実 (早稲田大学教授・比較法研究所長)
HONG Dong-Ho (駐日本国大韓民国大使館 経済公使)

第1部 (13時00分~15時25分)

|| 日韓におけるPBPクレームの解釈 
 日本最高裁判所は、2015.6.5.に、PBPクレームの発明の要旨も技術的範囲も物同一性説で解釈すべきであるとする立場を鮮明にした(最高裁平成27年6月5日判決平成24年(受)第1204号)。
 一方、韓国大法院は、PBPクレームの解釈に関して、特許性が問題になった事案に関する2015.1.22.宣告2011フ927全員合議体判決と特許侵害が問題になった事案に関する2015.2.12.宣告2013フ1726判決を通じて、特許性判断のための発明の要旨認定と特許発明の技術的範囲の確定のいずれの場面でも物同一性説を採用すべきであるとして、これまで議論が分かれていたPBPクレームの解釈論を統一した。
 韓国大法院の判例は、発明の要旨も技術的範囲でも物同一性説を採用した点では、日本最高裁判決との大きな違いはないようにみえるが、①後者の2013フ1726判決で「特許発明の技術的範囲確定の場面において、特許発明の権利範囲が明細書の全体的な記載によって把握される発明の実体に照らして過度に広いなどの明らかに不合理な事情がある場合には、その権利範囲を特許請求の範囲に記載された製造方法の範囲内に限定することができる」と判示した点、②PBP請求項が記載不備(明確性要件)に該当するかについては、何の言及もない、という2点において違いがあり、今後、日韓両国での実務においてどのような相違が生じるのかが注目される。
 第1部では、このような両国の最高裁判所の判断を踏まえて、日韓両国におけるPBPクレーム解釈に関する理論と実務を比較・議論する。

司会

高林龍(早稲田大学教授・早稲田大学知的財産法制研究所長)

登壇者

1.韓国におけるPBPクレームの解釈
  YOU Young-Sun(ソウル高等法院民事第5部(知財部)部長判事)
2.日本におけるPBPクレームの解釈
  設樂隆一(知的財産高等裁判所所長)
  田村善之(北海道大学教授)
3.コメントおよびディスカッション
  PARK Jung-Hi(法務法人太平洋パートナー弁護士)
  高林龍(早稲田大学教授)
  登壇者全員のディスカッション

第2部 (15時45分~18時00分)

|| 引用とフェアユース 
 韓国では、検索エンジンの画像検索結果(大法院2006.2.9.宣告2005ド7793判決)や歌手を真似て歌う女児のホームビデオ(ソウル高等法院2010.10.13.宣告2010ナ35260判決)などの事案も、引用(28条)規定を柔軟に解釈することで対応してきた。しかし、韓米FTA締結による著作権強化に対応するために、2011年12月の著作権法改正によって、著作権制限の一般規定である「公正利用(35条の3)」規定が新設された。ただ、「公正利用」規定が導入されてから4年が過ぎた2016年現在までに、本規定の適用が問題になった裁判例は多くない。
 一方、日本では、引用(32条1項)規定について、いわゆる美術鑑定証書事件の知財高裁判決(平成22年10月13日判決平成22年(ネ)第10052号)が、伝統的な2要件(明瞭区別性+主従関係)に言及することなく、「公正な慣行に合致」し、「正当な範囲内」で行われる利用が適法引用に該当するとして、引用規定を柔軟に解釈した。また立法論としては、TPP協定による著作権強化が予定されているなか、日本の国内事情にあった権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入が再論されており、そのような規定は必要かどうか、権利制限の一般規定を導入した場合、引用規定など既存の個別制限規定とどうすみ分けるかが問題となっている。
 第2部では、日韓両国における引用規定の解釈および権利制限の一般規定に関する理論と実務を比較・議論する。

司会

張睿暎(獨協大学准教授)

登壇者

1.韓国における引用規定の解釈および公正利用規定導入後の議論状況
  PARK Jun-Seok(国立ソウル大学副教授)
2.「引用規定の柔軟解釈と日本版フェアユース」
  上野達弘(早稲田大学教授)
3.コメントおよびディスカッション
  LEE Hoo-Dong(法務法人太平洋パートナー弁護士)
  東海林保判事(東京地方裁判所部総括判事)
  張睿暎(獨協大学准教授)
  登壇者全員のディスカッション