第40回RCLIP研究会 

著作権制限規定の適用を排斥する契約の効力

 http://www.rclip.jp/movie/20150227.html
【日時】2015年2月27日 18:30~20:30

【会場】3号館 401教室

〔報告者〕志賀典之(常葉大学法学部専任講師)

〔コメンテーター〕上野達弘(早稲田大学法学学術院教授)

〔概要〕著作物利用許諾契約において、著作権の制限規定に定められた利用行為を禁止する旨の条項が存在する場合に、それは有効か? また、そのような条項が無効とされる場合があるとすれば、どのような場合か?――この問いは、いわゆる「著作権制限規定の契約によるオーバーライドの可否」として長らく議論の対象とされてきたが、例えば、2014年7月『電子商取引に関する準則』(経済産業省)において示されている解釈は分かれているように、明確な見解は示されていない。また、諸外国の立法においても、欧州指令(91/250/EEC,96/9/EC)が、プログラムとデータベースの一定の権利制限に限って、これに反する契約上の合意の無効を明文化したことを別にすれば、各制限規定につき一般にその可否を明示している例はあまりみられない。しかし、各国の近時の裁判例では、例えばドイツで、音楽ポータルサイトからダウンロードした音楽データの複製が利用許諾条件により禁じられている場合になされた私的複製をめぐって、判決の見解が分かれるなど、すでに技術的保護手段による利用の制約が制度上承認されて久しい昨今にあっても、この問題はデジタルコンテンツの取引において争点となり、依然として広い議論の余地を有していると思われる。

このような条項の有効性の判断の根拠として考慮すべき要素や、また、判断の根拠を制限規定自体に求めることが可能か、あるいは、直接に契約法の一般原則の観点から問うべきかという問題についても、各国において見解の一致は見られない。現在の解釈論上、この問題の背後には、著作(権)者と著作物利用者の利益衡量、それらを反映した著作権制限規定と利用許諾契約の性質と関係性の把握という課題が存在するであろう。

今回の報告では、米国及び欧州におけるこの問題の歴史的展開を概観するとともに、特にドイツにおける近時の研究成果を参照しつつ、著作権制限規定と利用許諾契約の関係についての各国の理解の比較を踏まえて、利用許諾契約の解釈のあり方の考察を試みる。