🔭 音楽教室とJASRAC(安藤和宏)

 5月下旬に、韓国祥明大学の金景淑先生から「韓国著作権法学会の学術セミナーで講演して欲しい」というメールが届いた。韓国著作権法学会では毎年、日中韓の3カ国が参加する国際セミナーを主催しており、「JASRACの音楽使用料徴収形態と社会的影響について-最近の音楽教室事件を中心に―」というテーマで報告して欲しいとのこと。報告時間は20分、言語は英語。私のメールアドレスは、東洋大学のウェブサイトから知ったらしい。

 私はすぐに快諾したが、海外の学者がこの問題に興味を持っていることに驚いた。韓国でも多くの音楽教室が運営されているため、この問題に関心があるのだろうと勝手な想像をしながら、レジュメとパワポを準備して、8月29日にソウルに降り立った。韓国を訪問するのは、実に15年ぶりである。翌日、逐次通訳(英語→ハングル語)を入れて、30分間の報告を行ったが、参加者はかなり興味を持ったようであった。

 音楽教室事件に関しては、これまで多くの新聞や雑誌に私の見解が掲載されているので、それらを読んで頂きたいが[1]、ここまでマスコミが大きく取り上げるにはそれなりの理由があると思う。音楽著作権に関する話題は世間の注目を集めやすいことも要因ではあるが、やはりJASRACによる音楽教室における著作権使用料の徴収に反対する署名が55万件以上も集まったことが大きな反響を呼んだのであろう。私は当初から音楽教室の運営者は署名活動を展開すべきと唱えていたが、これほど多くの署名が集まるとは予想していなかった。

 さらに①音楽教育を守る会は、同会会員団体249社で原告団を結成して、音楽教室における著作物使用にかかわる請求権不存在訴訟を東京地方裁判所に提起し、②同会がJASRACによる使用料徴収に対して、著作権等管理事業法に基づく文化庁長官裁定を申請し、③知的財産法の第一人者である中山信弘先生がJASRACによる著作権使用料の徴収を疑問視する意見書を裁判所に提出し[2]、④著作権法学者の城所岩生先生が書籍『JASRACと著作権、これでいいのか』でこの問題を詳細に解説し、⑤世界的な音楽家である坂本龍一さんや「残酷な天使のテーゼ」の作詞者である及川眠子さん、「夢想花」や「越冬つばめ」で有名な円広志さんら著名な作家がJASRACに対する批判や反対を次々に表明するなど、話題には事欠かない事態が続いている[3]。

 話は戻るが、韓国の学術セミナーでは、コメンテーターのKOMCAの職員が私の報告を厳しく非難した。本来、彼はコメントと質問をすることになっていたが、質問することなく、一方的な批判に終始した。私に反論の機会を与えないのはちょっと卑怯だなと思いつつ、参加者が私の報告に好意的だったのが救いだった。国内・国外を問わず、相手の意見に真摯に耳を傾ける度量こそが、今の権利者団体に求められているものではないだろうか。

(RC 安藤和宏)
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[1] 週刊東洋経済(2018年5月26日号)11頁、北海道新聞2018年2月23日朝刊、毎日新聞1月25日朝刊、東京新聞2017年8月27日朝刊、北海道新聞2017年4月12日朝刊等。なお、筆者は学生の頃、音楽家を志し、ピアノ教室に7年間通っていた。また、就職後もジャズピアノを習うために2年間通った経験がある。

[2] https://music-growth.org/common/pdf/171114.pdf

[3] 坂本龍一さんは2017年11月14日のBuzzFeed Newsで「音楽教室のなかで複数の生徒さんが演奏したとしても、内輪の範囲だと僕は思いますけどね。JASRACはちょっと踏み込み過ぎたんじゃないかな。そんなことよりも、ほかにやるべきことがあると思いますよ」と述べている。