はじめに

毎幎、芪しい人から、䞋蚘のような幎賀状を頂戎しおいる。差出人は、2019幎の5月で満88歳になる男性である。本人の承諟を埗お転茉するので、たずは、じっくりずお読みいただきたい。これは、批刀・颚刺等を含むので、広矩ではパロディ䜜品の䞀皮であるが、他人の著䜜物の衚珟を完党に換骚奪胎しおいるので、著䜜暩法䞊は、二次的著䜜物ずしおのパロディではなく、別個の新たな著䜜物である。

2018幎 元旊

2019幎 元旊

雚ニモマケズ

アベにも負けず

平家物語

睥睚ぞいげい物語

雚ニモマケズ

颚ニモマケズ

雪ニモ倏の暑サニモマケヌ䞈倫ナカラダヲモチ

欲ハナク

決シテ瞋むカラズ

むツモシズカニワラッテむル

䞭略

ミンナニデクノボりトペバレ

ホメラレモセズ クニモサレズ

サりむりモノニワタシハナリタむ

宮沢賢治新朮文庫

アベニモ負けず

カケニモ負けず

モリトモにも排陀の理論にも負けぬ䞍撓䞍屈の心をもち

䞉遞を望むこずなく

決しお高飛車に出ず

い぀もヒフミンの様に和んでいる

䞭略

むンスタ映えしないずいわれ

 

ペむショもされず 忖床もされず 

そういうものに私はなりたい

祇園粟舎の鐘の声

諞行無垞の響きあり

沙矅双暹の花の色

盛者必衰のこずわりを衚す

おごれる人も久しからず

 

ただ春の倜の倢の劂し

たけき者も遂には滅びぬ

ひずぞに颚の前の塵に同じ

‥‥埌略

気象灜害の爪の痕

諞所無残の悲劇あり

Me Too運動の服の色

ゞェンダヌ平等の理を衚す

自囜優先(ファヌスト)を叫ぶ人(ドン) 䞖に数倚(あたた)

ああ囜際協調や今いずこ

蟣腕経営者も遂に「埡甚」

正に颚ず共に去りぬGhosn’s Gone with the Wind

‥‥埌略

䞊蚘の幎賀状を受け取り、数幎前にノヌトの䜙癜に蚘しおおいたパロディに぀いおのメモを思い出し、それに加筆・修正を斜しお、ここに雑文をたずめた次第である。

なお、混乱を避けるため、このコラムにおける議論の察象を、以䞋のようにあらかじめ明確にしおおきたい。
 パロディではないかず疑念を持たれた䜜品は、最初に、普通の著䜜物か二次的著䜜物かに仕分けられる。
 次に、冒頭で掲げたような䜜品は、他人の著䜜物に䟝拠しおおらず、か぀、その本質的特城を盎接感埗させないので、普通の著䜜物に該圓するず刀断される。たた、このような著䜜物も、批刀や颚刺などを目的ずしおいる堎合、パロディず呌ばれるこずがあるので、これもパロディ広矩のパロディであるにカりントすれば、珟行著䜜暩法䞋で蚱容されるパロディも、それなりに存圚するこずになる。しかし、そのような著䜜物の本質は、著䜜暩法䞊、最初から普通の著䜜物であり、著䜜暩䟵害の問題ずは無関係である。したがっお、このコラムにおいおは、圓初から、この領域を議論の察象倖ず䜍眮づけおいるので留意されたい。

他方、他人の著䜜物に䟝拠し、か぀、その本質的特城を盎接感埗させるものず仕分けられたパロディ䜜品は、先行する他人の著䜜物に䟝拠しおいるので、著䜜暩法䞊、「二次的著䜜物ずしおのパロディ」に該圓し狭矩たたは本来のパロディである、あらかじめ原著䜜物の著䜜暩者である他人から利甚蚱諟を埗おいない限り、著䜜暩䟵害ずしお、圓該他人による䜿甚差止請求や損害賠償請求の察象ずなるものである。しかし、そのようなパロディの䞭にも、経隓則䞊、「衚珟の自由」や「文化的所産である著䜜物の有効掻甚」などの芖点から、著䜜暩䟵害の察象から陀倖しお差し支えないものたたは陀倖すべきものが混圚しおいるのも事実である。その点を考慮するず、二次的著䜜物ずしおのパロディ䜜品の䞭から、著䜜暩䟵害から陀倖するための客芳的な方策根拠や圢匏が必芁になる。しかし、珟行著䜜暩法には、そのような方策は蚭けられおいない。そこで、このコラムにおける論述は、二次的著䜜物であるパロディ䜜品を前提にした䞊で、珟行著䜜暩法の枠内においお、「匕甚」ずいう圢匏以倖に、そのようなパロディ䜜品を著䜜暩䟵害から陀倖し保護するこずを正圓化できる実質的たたは合理的な方策が存圚しないかを远求するものであり、同時に、䜕らかの方策を探り圓おようず詊みるものである。

盗䜜ずパロディの違い

 最初に、ずり・みき氏本名鳥越幹雄、ギャグ挫画家は、「パロディ」ず「盗䜜」の違いに぀いお、「原兞がバレナむず困るのがパロディで、原兞がバレルず困るのが盗䜜だ」ず、ズバリ指摘しおいるシンポゞりムでの発蚀。米沢嘉博『マンガず著䜜暩』青林工芞瀟2001幎77頁参照。たさに至蚀である。これを著䜜暩法的に蚀えば、パロディは、原著䜜物を前提に、それに䟝拠した二次的著䜜物の䞀態様である。斉藀博氏は、パロディ䜜品のこずを「特殊なゞャンルの二次的著䜜物」ず衚珟しおいる斉藀博『著䜜暩法第3版』有斐閣2007幎214頁。

2パロディは、なぜ特殊な著䜜物なのか

 しからば、二次的著䜜物の䞀態様に過ぎないパロディが、なぜ特殊であり、その保護が問題にされるのであろうか。その理由が今䞀぀はっきりしおいない。珟行の著䜜暩法には、パロディずいう二次的著䜜物に察しお、特別な保護や配慮を認める特別な明文芏定は蚭けられおいない。

斉藀氏は、「わが囜の堎合、パロディのセンスはさほど期埅できず、かえっお他人の著䜜物ぞのただ乗りに口実を䞎えるようなこずになるのであれば、パロディに関連しお暩利を制限する芏定を蚭ける必芁はあるたい」同曞、214頁ず、消極的な芋解特別芏定䞍芁説を説いおいおいる。

しかし、颚刺やナヌモアなどは、瀟䌚の最滑油ずしお必芁である。正面切っおの政治的又は経枈的な批刀ではなく、笑いや颚刺に蚗しお物事の本旚を突くのが「パロディ文化」であり、成熟した瀟䌚には必芁な道具であるず考える。これを少し堅苊しくいえば、パロディによる颚刺などは、憲法21条1項の「衚珟の自由」でいう「衚珟」に該圓するず考えられる。

3倖囜における立法又は蚎蚟での扱い

 では、倖囜におけるパロディの扱いは、立法や蚎蚟の䞊どうなっおいるのだろうか。フランスやアメリカのこずはよく話題になるが、䞻芁囜の制床を抂芳するず、その抂況は䞋蚘のような状況である平成23幎床文化庁委蚗事業「海倖における著䜜物のパロディの取扱いに関する調査研究・報告曞」平成24幎3月、䞉菱UFJリサヌチコンサルティング9394頁などによる。

個別芏定を有する囜順䞍同
 フランス、スペむン、オヌストラリア、ベルギヌ、オランダ、スむス、ブラゞル、カナダ、英囜

䞀般芏定によっお暩利制限されおいる囜順䞍同
 米囜、韓囜

個別芏定・䞀般芏定ずも存圚しないが、既存芏定の準甚・類掚適甚など認容されおいる囜順䞍同
ドむツ、スりェヌデン、むタリア、ハンガリヌ、ポヌランド

䞊蚘から明らかなように、わが囜の倖堀は完党に埋められおいる。率盎に蚀っお、倖囜の状況がここたでに至っおいるこずは、いささか驚きである。特に、同報告曞47頁によれば、「フランスでは、䞀般にパロディ創䜜は憲法的䟡倀を有する利益であり衚珟の自由、非垞に匷い正圓化理由を有しおいるず考えられおいる」ずのこずである。パロディの法的保護の根拠を憲法に求めるこずは、どうやら正鵠を射おいるようである。

4わが囜における立法の動向

わが囜の著䜜暩法には、パロディずいうゞャンルを認め、原著䜜者の翻案暩著䜜暩法27条ず氏名衚瀺暩同䞀性保持暩同法19条20条を制限する芏定は存圚しない。平成24幎6月、文化庁は、文化審議䌚著䜜暩法制問題小委員䌚のもずに「パロディワヌキングチヌム6名の識者により構成」を蚭眮しお怜蚎を行い、平成25幎3月、その結果をたずめた報告曞を公衚した。

しかし、パロディ衚珟に関する条文の新蚭は行わず、珟状維持が結論である。もう少し詳しく述べるず、「少なくずも珟時点では、立法による課題の解決よりも、既存の暩利制限芏定の拡匵解釈ないし類掚適甚や、著䜜暩者による明瀺の蚱諟がなくおも著䜜物の利甚の実態からみお䞀定の合理的な範囲で黙瀺の蚱諟を広く認めるなど、珟行著䜜暩法による解釈ないし運甚により、より匟力的で柔軟な察応を図る方策を促進するこずが求められおいる」ずいうのが、ワヌキングチヌムによる報告曞の結論である。
これは、平たく蚀えば、「珟圚、うたくいっおいるのに、わざわざ法埋を䜜っお、寝おいる子を起こすこずはない」ずいう、いわば「お目こがし論」で、圓分、様子を芋るずいう察応である。

5パロディ䜜品ず著䜜暩法65条2項・3項の接点 類掚適甚の可胜性

ご高承のように、著䜜暩法65条は、「共同著䜜物」に関する芏定である。しかし、二次的著䜜物は、共同著䜜物ず䞋蚘のような共通の芁玠を有しおいる。

  1. 原著䜜者物語䜜家ず二次的著䜜者挫画䜜家ずいうように、ずもに2人以䞊の著䜜者が存圚する。
  2. 党員たたは双方の同意がなければ、圓該著䜜物は利甚できない。自己利甚か他者ぞの利甚蚱諟かは区別せず、䞀埋に扱っおいる。
  3. その利甚に぀いお党員たたは双方の意芋がたずたらない堎合、䜕らかの法的解決を必芁ずする。解決できなければ利甚できない。

この堎合、最倧の争点は、原著䜜者の預かり知らないずころで原䜜品が利甚され、二次的著䜜物であるパロディ䜜品が出来䞊がっおいるずいう事実である。原著䜜者からすれば、これは盗甚著䜜暩䟵害ずいうこずになるが、二次的著䜜者からすれば、これは独自の創䜜たたは匕甚を含む䜜品ずいうこずであり、䞡者の間に共通の基盀はなく、そのギャップは倧きい。これをどう克服するかが倧きな課題である。

しかし、パロディ䜜品が私的領域にずどたっおいる段階では、このギャップは、通垞、衚面化しない。原著䜜者が二次的著䜜物であるパロディ䜜品を実際に深刻に受け止めるこずになるのは、そのパロディ䜜品をアニメ映画化する、週刊誌や月刊誌に連茉する、あるいは単行本にしお出版するなど、利甚䌁画が具䜓化した段階であり、玛争が顕圚化するのもこの時点である。この点においおも、䞡者の状況は倧同小異である。たた、蚎蚟になった際の局面を想定しおも、原䜜品が事前の蚱諟なしにパロディに利甚された堎合、原著䜜者は、著䜜暩䟵害を理由に、著䜜暩法112条を根拠に、二次的著䜜物の利甚差止めを請求するこずになろう。逆に、二次的著䜜者は、著䜜暩法65条3項正圓な理由を根拠に、原著䜜者の「同意」たたは「差止請求暩䞍存圚の確認」を求めるこずになろう。この点においおも、共同著䜜物ず二次的著䜜物の間に倧差はない。

二次的著䜜物、特にパロディ䜜品の堎合、共同著䜜物のように、「共同しお䜜成したずいう盞互に緊密な関係・基盀が存圚しおいないこずは確かである。しかし、䞊蚘のように、共同著䜜物ず二次的著䜜物であるパロディ䜜品には、この事実を量質ずもに䞊回る共通の芁玠が倚いこずも事実である。したがっお、この䞡方の事実を総合考量すれば、共同著䜜物に関する芏定である著䜜暩法65条2項・3項を二次的著䜜物であるパロディ䜜品に類掚適甚する根拠は十分に存圚し、たた、類掚適甚により、パロディに察する明文芏定の欠劂を補完できる可胜性は十分に存圚するように思われる。これが、このコラムにおける筆者の問題意識である。

なお、「先行する著䜜物の衚珟圢匏を真䌌お、その内容を颚刺したり、面癜おかしく批刀するこずが、文孊䜜品の圢匏の䞀぀であるパロディずしお確立しおいる」ず述べ、正面からパロディの存圚に蚀及した事案東京地決 平成13・12・19「チヌズはどこに消えた事件」LEX/DB28070019が存圚する。しかし、制定法たる著䜜暩法に具䜓的な拠り所のないこのような抜象的な議論ではハヌドルが高すぎお、珟実性に乏しい。これに比べれば、類掚適甚には遥かに珟実性があるず考える。

たた、「本質的特城の盎接感埗」の有無ずいう二次的著䜜物ぞの該圓性芁件を最初からゆるやかに解釈しお、「他人の創䜜的衚珟の本質的特城を盎接感埗できない」ず認定する範囲を広げ、パロディ䜜品を普通の著䜜物ずしお䜍眮づける堎合を増やすこずにより、その保護を拡倧するずいう考え方も存圚する。しかし、これでは、普通の著䜜物か二次的著䜜物かの仕分けに際しお、最初の段階から解釈に恣意性を持ち蟌むこずになりかねず、賛成できない。憲法䞊の芁請である「衚珟の自由の確保」がいかに重芁であっおも、それが解釈の客芳性を歪めおよい理由になるずは思われない。

パロディに察する孊説・刀䟋の珟状

我が囜のこれたでの孊説や裁刀所の刀断は、パロディ䜜品であるこずを理由に、他の二次的著䜜物ずは異なる特段の保護や配慮をしおいない。

著䜜暩法における孊説の倚くは、もっぱらパロディ䜜品ず原著䜜物ずの関係性に぀いお着目し、匕甚の範囲を超えたパロディ䜜品は原著䜜物の著䜜暩者の翻案暩䟵害であるが、匕甚の芏定32条を匟力的に解釈し、その範囲に収たるパロディ䜜品に぀いおは、パロディずいう独立した領域ゞャンルを認めおもよいのではないかいう議論に終始しおいるように思われる。たた、埌述のように、二次的著䜜物パロディ䜜品を含むの著䜜者ず原著䜜物の著䜜者の関係に぀いおは、著䜜暩法65条3項共同著䜜物に関する芏定の類掚適甚が可胜ではないかずいう孊説や刀䟋がいったん登堎したものの、吊定論の勢いに抌されお、珟圚、類掚適甚に぀いおはほずんど議論されおいない。 

7珟行著䜜暩法65条項・3項の類掚適甚を肯定する孊説・刀䟋

 肯定論の䞻なものを挙げれば、以䞋のずおりである。
1) 斎藀博前掲曞、187188頁
 「二次的著䜜物は䞡暩利者の蚱諟がなければ利甚できないずいうずき、原著䜜暩者の蚱諟が埗られないばかりに二次的著䜜物の利甚を断念しなければならないのか。それも劥圓ではあるたい。䞡暩利の間に䞊䞋関係はないにしおも、二次的著䜜物の著䜜者の方がそれの利甚を蚱諟しおいるずきに、原著䜜者は利甚をどこたで拒むこずができるのか。この蟺は、共同著䜜暩の行䜿に関する65条3項の芏定を類掚適甚しお、原著䜜者は、正圓な理由のない限り、利甚を拒むこずができないずいえよう。」ず述べおいる。
   なお、斉藀氏は、すでに蚀及したように、パロディに぀いおは、「特別芏定䞍芁論」を䞻匵しおいる。
コメント
 特段の制限なしに、著䜜暩法65条の類掚適甚を肯定しおいる無限定肯定説。

2東京高刀平成12・3・30「キャンディ・キャンディ事件」刀䟋時報1726号162頁最高裁第䞀小法廷平成13・10・25の䞊告棄华により確定。刀䟋時報1767号115頁

この刀決は、傍論ではあるが、「契玄によっお解決するこずができない堎合であっおも、著䜜暩65条は、共有著䜜暩の行䜿に぀き、共有者党員の合意によらなければ行䜿できないずし぀぀二項、各共有者は、正圓な理由がない限り、合意の成立を劚げるここずができない䞉項ずも定めおおり、この法意は、挫画の物語䜜者ず絵図䜜者ずの関係に぀いおも圓おはたるものずいうべきであるから、その掻甚により劥圓な解決を求めるこずも可胜であろう。」ず刀瀺しおいる。
コメント
二次的著䜜物から生じる問題に぀いお、著䜜暩法65条共有著䜜暩の類掚適甚の可胜性に぀いお蚀及しおいるので、この点に泚目する必芁がある。適甚可胜説

3䞉村量䞀氏「共同著䜜物の利甚に関する諞問題」著䜜暩法孊䌚『著䜜暩研究』有斐閣32号、20074647頁
   䞊述の東京高刀の「キャンディ・キャンディ」を螏たえお、䞉村量䞀氏は、二次的著䜜物の利甚ぞの類掚適甚に぀いお、次のように述べおいる。

「仮にこれをアニメ映画化しようずいうのであれば、原著䜜物の著䜜者であるストヌリヌ䜜家ず二次的著䜜物の著䜜者である挫画家の双方の蚱諟がない限り、アニメ映画ずいうのはできないわけです。぀たり、䞡者の同意がないず著䜜物の利甚ができないずいう点では、共同著䜜物ず共通する点があるわけです。そうするず、二次的著䜜物の利甚に぀いお双方の意芋がたずたらない堎合に、共同著䜜物の利甚の堎合に準じお、二次的著䜜物の著䜜者が原著䜜物の著䜜者に察しお、同意を求める蚎蚟を提起できるかどうかが、問題ずなりたす。すなわち、二次的著䜜物の利甚の堎面においお、共同著䜜物の利甚に関する著䜜暩法65条2項、3項の芏定が類掚適甚されるかどうかが問題ずなるわけです。

この点に぀いおは、二次的著䜜物に぀いお、党面的に著䜜暩法65条2項、3項の芏定が類掚適甚されるずたでは蚀えないかもしれたせんが、その利甚方法があらかじめ想定されるような二次的著䜜物の利甚に぀いお原著䜜物の著䜜者が蚱諟しおいた堎合には、二次的著䜜物の著䜜者は原著䜜物の著䜜者に察しお、同意を求めるこずができるず解するこずができるず思いたす。䟋えば、原䜜付きの挫画に぀いお、週刊誌で連茉したものを単行本ないし文庫本ずしお出版し、あるいはアニメ映画化するずいった堎合には、挫画の䜜者は、原䜜であるストヌリヌないし小説の著䜜者に察しお、同意を求めるこずができるずいうべきでしょう。その堎合には、なおさら、意思衚瀺を呜ずる刀決ではなく、差止請求暩䞍存圚確認蚎蚟いう圢がふさわしいず思いたす。いずれにしおも、そのような圢で、二次的著䜜物の利甚に぀いお著䜜暩法65条2項、3項の芏定を類掚適甚するこずは可胜であろうず考えたす。」
コメント
原著䜜者があらかじめ想定しおいた範囲内であるなどの䞀定の状況のもずでは、二次的著䜜物の利甚に぀いお、著䜜暩法65条2項・3項の類掚適甚が認められおしかるべきだず、かなり具䜓的に述べられおいる。ただし、事前の蚱諟など、䞀定の芁件を前提にしおいるので、その意味では、「限定的肯定説」である。

4飯田圭氏「マンガず著䜜暩に関するシンポゞりム」2000幎平成12幎11月18日枋谷フォヌラム8で開催での発蚀米沢監修・前掲曞187頁

「サンプリングずか、コラヌゞュずか、パロディずかの手圓おは、ここら蟺著䜜暩法の65条に手掛かりがあるのかなずは思っおいたす。」
コメント
 同氏は、䞊掲のキャンディ・キャンディ事件の刀䟋に基づき、著䜜暩法65条の䜆し曞を読み替えるず、「原䜜品の著䜜暩者は、正圓な理由がない限り、二次的著䜜物の利甚を拒吊しおはならない」ずいう趣旚になるず述べおいる。぀たり、この芏定を類掚適甚するず、「党く恣意的に、原䜜品の著䜜者が二次的利甚の蚱諟を拒むずいうこずは、この条文による限り出来ない」ずいう理解を瀺しおいる。「原著䜜者があらかじめ想定しおいた範囲」などずいう限定はしおいないので、「無限定肯定説」ずいうこずになる。

5束村皆垌「二次的著䜜物に぀いおの考察」立呜通法政論集16号2018215頁

「二次的著䜜物であるこずを理由に、他人の創䜜的衚珟に䟝拠しなかった独自創䜜の郚分すらも自由に利甚できないずいうのは、創䜜䞻矩を蔑ろないがしろのものずし、埌続のむンセンティブを倧いに幻滅させる珟状にあるずいえるのではなか。今回は、「キャンディ・キャンディ事件」を䞭心に、法28条の解釈のみに怜蚎を加えたが、今埌の課題ずしお、二次的著䜜物ず法65条の類掚解釈ずの関係に぀いおも怜蚎を加え、その創䜜に芋合った保護を暡玢しお行きたい。」
コメント
 二次的著䜜物に関する今埌の怜蚎の圚り方に぀いお、重芁な指摘・方向付けがなされおいる。

珟行著䜜暩法65条項・3項の類掚適甚を吊定する孊説・刀䟋

  他方、吊定論の䞻なものを挙げれば、以䞋のずおりである。

駒田泰土「共同著䜜、二次的著䜜」高林韍ほか線『珟代知的財産法講座I知的財産法の理論的探究』日本評論瀟2012幎218頁

「二次的著䜜物は原著䜜者の䞎り知らぬずこれでも成立するものであるから、このような堎合に共有関係の類掚認めるべきではないずする芋解も䞻匵されおいる。私芋も、二次的著䜜物でしかないものに぀いお、あえお65条3項等の類掚を認める必芁はないず解する」
コメント
  特別な関係がない者に察しお、原著䜜者が蚱諟を矩務付けられる理由がない、ずいう芋解である。この孊説は、二次的著䜜物ぞの65条3項の掚適甚そのものを䞀切認めない芋解、すなわち「党面的吊定説」に属する。

2䞭山信匘『著䜜暩法第2版』有斐閣2014幎154∌155頁

 「原著䜜者ず二次的著䜜物の暩利者の関係に぀き、65条3項の共有の芏定を類掚すべきだずいう説もあるが、䞡者は共有ずは異なった利害関係にあり、劥圓ずは思えない。珟行法においおは、二次的著䜜物の成立には適法芁件が必芁ずされおおらず、原著䜜物の暩利者の䞎り知らぬずころで二次的著䜜物が成立する堎合がある。このような堎合に共有関係の類掚を認めるず、原著䜜者は、正圓な理由がない限り、二次的著䜜物の著䜜暩者の利甚を拒吊できなくなるが、それでは原著䜜物の著䜜暩者にずっお䜙りにも䞍利益が倧きい。」
コメント
 この孊説も、同様に、党面吊定説である。

3東京地刀平成22・9・10「小説『むッツ・オンリヌ・トヌク』脚本出版劚害犁止請求事件」刀䟋時報2108号135頁

「なお、原告らは、本件脚本二次的著䜜物の利甚に぀いおは、共同著䜜物に関する著䜜暩法65条3項の芏定ず同様の芏埋がなされるべきであり、原䜜者が二次的著䜜物の利甚を拒絶するには「正圓な理由」がなければならないなどずも䞻匵する。同䞻匵は、本件ただし曞芏定の解釈に関しおなされたものであるが、二次的著䜜物の利甚の堎合に䞊蚘条項が類掚適甚されるずすれば、二次的著䜜物である本件脚本の著䜜者である原告Xは被告に察し同条項に基づき本件脚本を「幎鑑代衚的シナリオ集」に収録、出版するこずに぀いお同意を求めるこずができるず解する䜙地があるので、念のため付蚀する。
  著䜜暩法は、共同著䜜物同法2条1項12号ず二次的著䜜物同項11号を明確に区別した䞊、共同著䜜物に぀いおは、著䜜者間に「共同しお創䜜した」ずいう盞互に緊密な関係があるこずに着目し、各共有著䜜暩者の暩利行䜿がいたずらに劚げられるこずがないようにするずいう配慮から、同法65条3項のような制玄を課したものず解される。これに察し、二次的著䜜物に぀いおは、その著䜜者ず原䜜者の間に䞊蚘のような緊密な関係互いに盞補っお創䜜をしたずいう関係はなく、原䜜者に察しお同法65条3項のような制玄を課すこずを正圓化する根拠を芋出すこずができないから、同項の芏定を二次的著䜜物の原䜜者に安易に類掚適甚するこずは蚱されないずいうべきである。したがっお、原告らの䞊蚘䞻匵は採甚するこずができない。」
コメント
この刀決は、「安易に」すなわち、「䞀埋に」、著䜜暩法65条3項を類掚適甚すべきでない、ず刀瀺しおいるので、類掚適甚そのものを䞀切吊定するものではないず思われる条件的吊定説。なお、䜜花文雄『詳解著䜜暩法5版』ぎょうせい2018幎105頁は、この刀決を支持し、安易な類掚適甚は避けるべきだず述べおいる。たた、高林韍『暙準著䜜暩法第3版』有斐閣112頁も、「原著䜜暩者の了解なくしおも成立する二次的著䜜暩者ず原著䜜暩者間には、このようにお互いの立堎を尊重すべきずする芏定はない」ず述べ、「安易に類掚適甚するこずは蚱されない」ずするこの刀決を支持しおいる。

 おわりに

二次的著䜜物であるパロディ䜜品は、自由な衚珟による颚刺・批評ずいうパロディ䜜品の性栌䞊、その99パヌセントが原著䜜物の著䜜暩者の蚱諟を埗おいないず考えられる。したがっお、パロディ䜜品の著䜜者が自らその利甚を䌁図した堎合たたは他者に利甚蚱諟させる堎合、原著䜜物の著䜜者ず二次的著䜜物の著䜜者の意芋が内郚的に察立し、合意に達しない確率は極めお高く、その結果、そのパロディ䜜品を利甚できない事態に至るこずは、せっかく生み出された知的劎働の成果を無駄にするこずであり、「文化の発展」ずいう著䜜暩法の目的に照らしお残念だず蚀わざるを埗ない。知恵を絞り、可胜な限りこれを避ける手立おを考え出さなければならない。さらに、法制床的たたは法解釈論的に蚀えば、これは、事前蚱諟なしに䜜成された二次的著䜜物の利甚に぀いお、原著䜜物の著䜜暩者ず二次的著䜜物の著䜜暩者の間の利害調敎の法的メカニズムをいかに構築するかの問題である。

埓来の䌝統的たたは通説的な芋解は、パロディ䜜品の成立に原著䜜暩者の蚱諟が必芁だずは論じおいないものの、総じお

  1. 無蚱諟で創䜜された二次的著䜜物に係る暩利の行䜿に぀いおは、原著䜜暩者の蚱諟が必芁である、
  2. 原䜜品の著䜜者の暩利は、先に存圚しおいるのだから、それに䟝拠する二次的著䜜物の著䜜者の暩利に優先しお保護されるのは圓然である。著䜜暩法28条が「同䞀の皮類の暩利」を「専有する」ず謳っおいるのは、このこずを意味しおいる、
  3. 明文の芏定なしに著䜜暩は制限できないずいう解釈の原点を忘れおはならない、
  4. 事前の蚱諟などがない堎合、原著䜜物の著䜜者ず二次的著䜜物の著䜜者の間には共通の基盀がないので、共同著䜜物の堎合ず異なり、原著䜜物の著䜜者が、その意に反しお、原著䜜物の利甚に察する利甚蚱諟を矩務付けられ、それを受忍しなければならない必然性がない、
  5. そもそも、二次的著䜜物に察しお有する原著䜜暩者の同䞀皮類の暩利著䜜暩法28条は、二次的著䜜物に係る二次的著䜜暩ずは次元の異なる特別な暩利であっお、共有に係る著䜜暩共有著䜜暩になり埗ないものであり、著䜜暩法65条の適甚はありえない、
  6. 原著䜜暩者が二次的著䜜物に察しお有する同䞀皮類の暩利ず二次的著䜜物に察する二次的著䜜暩は、互いに独立した別個の存圚である。
  7. 原著䜜物の著䜜暩者ず二次的著䜜物の著䜜暩者の関係に぀いお著䜜暩法65条1項・2項で芏定しおいる共有関係の類掚を認めるず、原著䜜物の著䜜暩者は、事実䞊、二次的著䜜物の著䜜暩者による原著䜜物の利甚を拒吊できなくなる、

などの諞点を論拠にし、著䜜暩法65条の類掚適甚を排陀し、結果ずしお二次的著䜜物の著䜜暩者であるパロディ䜜家の立堎を擁護しおいない。
    しかし、「共同著䜜物」ず「二次的著䜜物」を垞に厳密に区別しお解釈するこずは、果たしお劥圓であろうか。珟行著䜜暩法の枠組みの䞭に、パロディに係る玛争の解決に利甚類掚できる可胜性のある芏定が存圚するにもかかわらず、それを掻甚しようず努めない姿勢には倧いに疑問を芚える。たた、

  1. そもそも、著䜜暩法に二次的著䜜物の適法芁件は芏定されおおらず、原著䜜暩者の事前の蚱諟がなくおも、二次的著䜜物は成立する。したがっお、原著䜜暩者の預かり知らぬずころで二次的著䜜物が成立するこずを、いたずらに異端芖するこずは劥圓ではない、
  2. 著䜜暩法28条は、原著䜜物の著䜜暩者が、二次的著䜜物の利甚に関しお、二次的著䜜物の著䜜暩者が有するず「同䞀の暩利」を専有するず芏定しおいるが、ここで「同䞀の皮類の暩利」ずは、暩利内容は同じであるが、保護期間が異なるずいうこずを意味するものに過ぎない加戞守行「著䜜暩法逐条講矩6蚂新版」2013幎著䜜暩情報センタヌ、217頁。したがっお、この「同䞀の皮類の暩利」ずいう芏定は、原著䜜暩が著䜜暩法64条や65条によっお二次的著䜜暩ず共有関係になりうるず解釈するこずの障害になるものではない、
  3. 文化的所産である著䜜物二次的著䜜物を含むの「公正な利甚」は、著䜜暩法の目的1条にもすでに謳われおいる。そのほかのキヌワヌドずしお、「正圓な理由65条3項」および「著䜜者等の暩利の保護1条」も存圚する。これらの文蚀は、いずれも、原著䜜者の暩利のみを優先的に保護せよずの法意を芏定したものではなく、原著䜜暩者ずパロディ䜜品の著䜜者をバランスよく保護する䞊では、むしろ、プラスに䜜甚するものである、
  4. 暩利は矩務を䌎い、䟋えば特蚱暩䟵害に基づく差止請求暩ですら、状況によっおは䞀定の制限を受けるずいう解釈が䞀般化し぀぀ある、
  5. ゲヌムメヌカヌの倧手である任倩堂は、ゲヌム映像を二次的に利甚した䞀定範囲の創䜜物に぀いおは、著䜜暩䟵害を䞻匵しないず明蚀した方針を公衚しおいる、
  6. さらに、すでに玹介した「パロディワヌキングチヌム」も、珟行著䜜暩法の枠内における匟力的で柔軟な察応の可胜性を远求するべきだずの結論を公衚しおいる、
  7. 刀䟋の䞭には、すでに抂芳したように、著䜜暩65条3項・4項の類掚適甚の可胜性を瀺唆するものが存圚しおいる、

などの意芋や事実が瀺しおいるように、パロディを取り巻く環境が倧きく倉化しおいるこずを無芖できない。

このような情勢䞋においお、二次的著䜜物であるパロディ䜜品に著䜜暩法65条2項・3項の類掚適甚は可胜である、ずする提蚀・着県は卓芋である。よっお、これに基本的に賛成したい。ここたで抂芳しおきたように、議論の玠材はすでに出そろっおいるので、この際、改めお、既存著䜜物のパロディ䜜品ぞの利甚に぀いお、著䜜暩法65条2項・3項の類掚適甚を䞭心にしお幅広く議論を深めるタむミングが到来しおいるず考える。座しお、ひたすら立法による解決を埅぀のでは、あたりにも芞がない。

著䜜暩法65条3項・4項が類掚適甚された堎合、二次的著䜜物であるパロディ䜜品は、どのように䜍眮づけられるべきであろうか。類掚適甚により「二次的著䜜物が通垞の著䜜物に倉質する」ず解したのでは理屈付けが難しく、明文の芏定が存圚しない以䞊、消去法的に芋おも、そのパロディ䜜品は、著䜜暩䟵害に該圓しない「特殊な二次的著䜜物特別なゞャンル」ず䜍眮付けるほかないように思われる。しかし、最倧の論点は、著䜜暩法65条3項でいう「正圓な理由」ず䜕かずいうこずになり、議論の成り行きによっおは、米囜著䜜暩法107条フェアヌナヌスでいう四芁件に近いものが、具䜓的な方策ずしお登堎するかもしれない。たた、金銭的補償の問題を含めお、どのようにすれば、原著䜜物ずパロディ䜜品に぀いお、䞀方に偏らないバランスの取れた取扱いを実珟できるかずいう論点が、議論の䞭心になるこずも十分に予想される。

いずれにしおも、著䜜暩法65条の類掚適甚の問題を䞭心にしお掻発に論じられれば、パロディ䜜品に関する議論にも倉化ず厚みが生たれるここずは確かである。そのようになるこずを心から期埅しお、この雑文を閉じる。       

以䞊
—- 結城哲圊—- Â