「一帯一路」(英語表記は、One Belt One Road, OBOR又はthe Belt and Road Initiative, BRIなどと呼ばれる。)とは、中国が主導する広域経済圏構想であり、2019年10月時点では世界各国130カ国以上が参加していると言われる巨大な経済圏である。その経済的、或いは政治的な側面に関する研究や書籍は数多く存在するが、知財との関連において検討されているものは非常に少ない。そもそも、「一帯一路」において知財がどのような役割を持っているのか、その将来像はどのように捉えられているのか、本コラムにおいて検討を行ってみたいと思う。

 「一帯一路」は、主にインフラ投資や貿易推進が中心であり、制度化された多国間自由貿易協定(FTA)でもないし、WTOのような統合された機関でもない。さらに、参加国の発展状況や文化と言った事情は大きく異なる。従って、知的財産法を含む法制度も様々である。しかし、最近、中国と「一帯一路」沿線国との間でのFTA締結や各国の法制度の調和と言った課題はしばしば取り上げられており、その方向で何らかの動きがあると言える。そのような動きとして、知財分野に関して言えば、各国の管轄機関間における協力活動、頻繁に行われているセミナー及び会議又は知財ルールの調和化検討といったものである。

 そして、中国企業の沿線国への投資が情報通信分野を中心に拡大しており、その技術の法的保護などについても当然課題になる。さらに、各国の情報通信分野といったインフラが整備されていくに連れ、中国の技術をベースにしたある程度の標準化も進んでいることは特筆すべきことであろう。さらに、商標に関して言えば、商品やサービスの流通拡大に伴って、関連事件は増えていくと予想される。しかし、現段階ではまだ「一帯一路」特有のソフトローのアプローチが取られており、今後、知財紛争が起きた時にどのように対処されていくのか注目されよう。

 「一帯一路」は、債務のワナと言った問題が指摘され、不透明な部分も多いが、沿線国間における貿易拡大や参加に意欲を見せる国や企業の増加が続いていることから、今後もその活動が広がり、知財分野における事例も増えていくのではないかと予想される。さらに、陸路の方であるシルクロード経済ベルトは、大航海時代以降、世界の主な貿易ルートから取り残されていた内陸の国々にとって大きな可能性を持っており、非常に魅了的なプロジェクトでことは否定できない。

 そこで、9月27日にある出来事が起こった。日本の安倍晋三首相のEU訪問中に、中国が主導する「一帯一路」に代わる選択肢として、アジア・欧州間のインフラ整備を巡る合意文書に署名された。両首脳の演説などでは、「一帯一路」の名前は具体的に取り上げられていないが、それに対抗する形であると見られており、今後、日本版一帯一路が登場するのではないかと注目される。従って、知財を含む凡ゆる分野において、「21世紀型のシルクロード」においてどのような進展が行われていくのか注目に値する。

—- <Mirshod Kuchkorov (RC)>—-