仕事の必要から、また、個人的なつながりから、多くのデザイナーと触れ合う機会がありますが、弁理士として意匠の実務に携わって四半世紀にもなろうとしている今になって猶、いささか不可解なことがあります。
 デザイナーと話しをしていると、「言葉が通じない・・・」と思う場面が多くあるのです。
 例えば、あるデザインを指して「とても良い」と断言するデザイナーがいます。でも私には、どうしてそれが「とても良い」のかが分からない。まったく分からないのだけれども相手が自信たっぷりなので「どうしてです?」と訊ね、説明を聞くと、混乱する。そうこうしているうちに、互いに残念な気分になっていくといった具合です。
 私には、このような苦闘を回避しようとする癖が身についています。よほど酔ってでもいない限り「どこが良いのさ!」などと詰め寄ることはしませんし、仕事上探索せざるを得ないときも、だいたいのところを聞いておいて、デザイナーが良いというのなら良いのだろうという前提であとは私なりにその理由を解釈するというやり方をとります。
 弁理士は自ら善し悪しの価値判断をする職業ではありませんし、出願だ、訴訟だ、ということになるとそもそも土俵が法律ですから、特段仕事を進める上での不都合があるわけでもないのですが、とはいえ、そういう遣り取りに終始していると、常になにかしら核心的部分の周辺をぐるぐるしているような、底の見えない穴を覗き込んでいるような心持ちを得るに到ります。
 このことは、しかしおそらく間違いなく、お互いさまです。デザイナーも、私に接して「分かってない」と嘆いていること請け合いです。法律屋は法律屋の言葉で話すし、デザイナーはデザイナーの言葉で話しをします。言語が共通しないので、心して掛からないと、互いに不信が生まれます。

 デザインと法協会が発足して10ヶ月になります。当研究所の所長である高林龍教授が副会長を務め、私も運営に携わっています。デザインと法との関わり合いを考える場として設立され、現時点で個人会員が120名ほど、加えて法人会員が20社ほど、そしてそのうちの3割をデザイン関係者が占めます。
 我々の当面の目標は、共通言語づくりです。
 いくら実務においては不都合がないとはいえ、現状を踏まえなにかしらより良いデザイン保護の在り方を志向しようとするのであれば、デザイナーの言葉を知らなければなりません。デザイナーが「とても良い」といった理由に接近することが、デザインとはなんであるかを知る手掛かりになります。デザインがなんであるかが分からなければ、それをどのように保護すべきかについて、適切な結論を得られません。我々には、互いに通じる言葉を獲得することが必要です。先ずは、膝を突き合わせて話しをしてみなければなりません。
 発足前の準備期間を含めると既に3年が経過しました。その間決して順調だったわけではありませんが、今我々は、試行錯誤しつつも、互いの共通理解を目指して歩みを進めています。デザインと法との関わり合いを解きほぐし、いずれ立法にも良いインパクトを与え、翻って我が国のデザインの活性にも貢献できる組織に育つことを願って。
 皆様、ぜひご参加ください。共に考えましょう。
 ホームページはこちら→ http://jadela.jp/   。年会費は5,000円と大変リーズナブルになっております。
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