昨今の社会的情勢から、やはり依然として、授業もオンラインで実施することになっているわけでございますが、対面授業でも感じる困難が、より一層強く感じられるように思います。いわゆる「授業のつかみ」でございます。そもそも私の場合、対面でも難しく、どういったお話をすれば良いのか、分からないままだったのですが、オンラインでは学生の皆さんの反応すらよく分からない状況におかれますので、なお一層困ってしまいます。結局、現状では、とりあえず天気の話をして、すぐ本題に入ることが多いです。

 この「つかみ」という言葉ですが、漫才などの文脈でよく聞く言葉です。また、落語・講談でもその日の客層や天気などもネタ選びの要素になるとのことです[1]。観客の状況、様子を把握することが、重要であるということでしょうか。

 ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、イベント等の開催の自粛、さらに中止又は延期要請等がなされますが、緊急事態宣言解除後より[2]徐々に、段階的に緩和しつつあった[3]ところですが、ここ最近はまた見通しが立たない状況となっています。ライブ、舞台の場が制限されてしまうことを背景としているのでしょうか、最近、お笑い芸人のYouTube進出が多く見受けられるように思います。

 私もファンの一人として、色々な芸人さんの動画を拝見します。例えば、漫才師・中川家さん[4]が、2019年5月[5]からYouTube公式チャンネル[6]を始められているのですが、新型コロナウイルス感染症の拡大の前後で、コントの収録方法に違いが見られます。同感染症の拡大以前に収録されたとみられるコント動画[7]は、中川家さんの単独ライブのライブ映像を公開されています。つまり、単独ライブにおいて観客の前で演じられたコントの模様を動画として収録したものというわけです。そして、同感染症の拡大以後に収録されたとみられるものは、スタジオにおいて小道具やセットを用いてコントを行うもの(観客のいないコント番組の収録形式)[8]や、実際の喫茶店を借りてコントを行うもの[9]へと、形式が変わっているようです。

 ところで、落語、講談、漫才台本といったものは著作物となりえ、著作権法10条1項各号に掲げる著作物でいえば、脚本として言語の著作物(同項1号)に当たると考えられます[10]。コントも同様に考えることが出来ようと思います[11]

観客を入れずに収録される一部のコント番組[12]のような場合を除くと、劇場などで観客の前でコントを行うことが多いのではないかと思われます(もっともコント番組でも観客の前で行われることもありましょう[13])。このような場合において、コントの模様を映像・動画として収録するとしますと、コンビなど演者による言語の著作物であるコント台本・脚本の上演を録画することと考えられ、当該録画は台本・脚本の著作物の複製であると言えそうです(2条1項15号イ[14])。中川家さんのYouTube動画のうち、感染拡大以前に単独ライブにおいて観客の前で演じられたコントの模様を動画として収録したものは、これに当たると考えられます[15]。アドリブ部分については文章として固定されていないとしても、その場で逐次創作が行われているとして、脚本としての著作物性が認められる部分があると考えられます[16]。他方で、スタジオにおいて小道具やセットを用いてコントを行うもの(観客のいないコント番組の収録形式)や、実際の喫茶店を借りてコントを行うものの場合には、コント台本・脚本に基づいた実演がなされていますが、YouTube動画自体は脚本の二次的著作物としての映画の著作物であろうと思われます[17]

もっとも、こうした違いがあるからといって、コントのネタ(台本・脚本)を芸人が創作し、演技のみならず、撮影方法など含め演出等についても当の芸人が指示して撮影しているということであれば、録画ないし動画が台本・脚本の著作物の複製と構成されようが、脚本の二次的著作物としての映画の著作物と構成されようが、いずれにしろ原著作物についても二次的著作物についても、著作者はその芸人ということになろうと思います[18](もちろん、芸能プロダクションと芸人とがどのような契約関係にあるのかにもよりますが、職務著作となる場合もありえようと思います)。

とはいえ、YouTubeにおいても、―当然、テレビ局ほどではないにせよ―スタッフがつくことは、有力YouTuberになれば当たり前といってよい状況であり、(中川家さんの動画がどうであるかは別として)場合によっては、演出、編集等を担うことも考えうるわけです。台本・脚本の著作物の複製とされるときにはスタッフが著作者と認められるような何らかの法的構成をする余地は、脚本の二次的著作物としての映画の著作物とされる場合よりも、比較的、狭められているような気がしないでもありません[19](もっとも、2条1項15号イの性質、適用範囲に関する考え方次第かと思いますが、そもそもこの場合には台本・脚本の著作物の「複製」ではなく「翻案」と位置付けることも考えられ、同規定の適用範囲自体非常に狭いと理解することもあり得ようと思います[20])。また、映画の著作物の著作権の帰属に関する特則である29条がありますが、脚本の二次的著作物としての映画の著作物とされる場合には、YouTube動画とはいえこの規定も考慮しなければならないことになろうと思われます[21]

そうすると、同じようにコント動画をYouTubeで配信しているにもかかわらず、その収録方法により、場合によっては著作者ないし著作権者が誰になるのかという点に違いが出る可能性があるということになるのではないでしょうか。素朴に考えると、なぜ違いがあるのか違和感があるような気がしないでもありません。これも技術の進展に伴う、法制度のズレの一場面ということなのでしょうか。

昨今の情勢で暗いニュースが非常に多い中、YouTube動画の鑑賞での笑いが心の支えになっています。「授業のつかみ」「話の面白さ」についての私のスキルはちっとも(どころか、一切)向上しないのですが、限られたストレス解消の有力手段ですから、人生に有意義なものだと大義名分があると確信(?)して、息抜きに気兼ねなく動画を拝見しております。

いつの間にか年の瀬が迫ってまいりましたが、来年こそは希望ある良い年となるよう心から願うところです。皆様、良いお年をお迎えください。

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[1] YouTubeチャンネル・神田伯山ティービィー「【密着#05】松之丞が六代目神田伯山になった日 〜爆笑問題大暴れ〜」(2:29時点~)https://youtu.be/E-qWSllsfBE?t=149 (最終確認:2020年11月21日)

[2] 「移行期間における都道府県の対応について」(令和2年5月25日付け事務連絡)https://corona.go.jp/news/pdf/ikoukikan_taiou_0525.pdf

[3] 「来年2月末までの催物の開催制限、イベント等における感染拡大防止ガイドライン遵守徹底に向けた取組強化等について」(令和2年11月12日付け事務連絡)https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/009/761/1/1_.pdf

[4] 兄・剛氏と弟・礼二氏からなる漫才コンビ。2001年第1回M-1グランプリ優勝(初代チャンピオン)、2010年及び2019年に上方漫才大賞受賞など多数の受賞歴を有する。

[5] 中川家さんの場合には、新型コロナウイルス感染症の拡大以前からチャンネルが開設されていた。

[6] YouTubeチャンネル・中川家チャンネル(2019年5月28日開設) https://www.youtube.com/channel/UCOg6P-Ne5Hdd5tDtcOHDd-Q

[7] 感染症拡大以前のライブ映像とみられる動画としては、2019年12月5日公開の動画「中川家の寄席 001 『グアムの税関』」https://www.youtube.com/watch?v=-QyD_-ODB0Yから、2020年4月24日公開の動画 「中川家の寄席 021『帰省ラッシュのニュース映像』」https://www.youtube.com/watch?v=ysbv1P0Pjksまでの「中川家の寄席」から始まるタイトルの動画であろうとみられる。なお、2020年7月17日公開の動画「中川家の寄席 022『自動車教習所』」https://www.youtube.com/watch?v=KxSRkb_qEtMは他の公式チャンネルにおいて過去に公開されていたものとみられ、前述の各動画が収録されたとみられる時期よりも前のものと思われるが、ライブ映像であることは同様である(いずれも最終確認:2020年11月22日)。

[8] 2020年9月11日公開の動画「中川家の寄席 2020 『おかんと温泉旅館にて』」https://www.youtube.com/watch?v=JALzgOlGqxg、2020年9月18日公開の動画「中川家の寄席 2020  『師匠と弟子』」https://www.youtube.com/watch?v=b0Q5UkVLSjI、2020年9月25日公開の動画「中川家の寄席 2020『スシロー ナレーション録り』」https://www.youtube.com/watch?v=P3CuHJ1tThM、2020年10月2日公開の動画「中川家の寄席2020 『羽田空港』」https://www.youtube.com/watch?v=lPD7ElDHpcs、2020年10月16日公開の動画「中川家の寄席2020『スピード違反』」https://www.youtube.com/watch?v=XyYAgGiHYwg、2020年11月20日公開の動画「グアムのサンセットディナーショー」https://www.youtube.com/watch?v=-ldgvqXuL8s (いずれも最終確認:2020年11月22日)。

[9] 2020年10月9日公開の動画「中川家の寄席2020『自動車のセールス』」https://www.youtube.com/watch?v=CS40jh5sl64 、2020年10月23日公開の動画「中川家の寄席2020『行きつけの喫茶店』」https://www.youtube.com/watch?v=QResrM_UK6U 、2020年10月30日公開の動画「中川家の寄席2020 『怪しい人』」https://www.youtube.com/watch?v=-KQUVpOX4Hc 、2020年11月6日公開の動画「中川家の寄席2020『喫茶店のおばちゃんとおばちゃん』」https://www.youtube.com/watch?v=zu6fNCEMj1w 、2020年11月13日公開の動画「中川家の寄席2020『剛とおばちゃんと喫茶店』」https://www.youtube.com/watch?v=nHgQQDKNqfo (いずれも最終確認:2020年11月22日)。

[10] 加戸守行『著作権法逐条講義』(著作権情報センター、六訂新版、2013年)120頁、半田正夫=松田政行編『著作権法コンメンタール1[1条~25条]』(勁草書房、第2版、2015年)536頁〔橘高郁文〕(特に落語について、既存の古典落語と新作落語とを区分して論じる)、半田正夫『著作権法概説』(法学書院、第16版、2015年)87頁、島並良ほか『著作権法入門』(有斐閣、第2版、2016年)37頁〔横山久芳〕。なお、斉藤博『著作権法概論』(勁草書房、2014年)40頁は「講談とか、落語、漫才なども言語の著作物に含まれるのかというと、これらは、自作のときはともかく、概して、口頭による伝達行為そのもの、すなわち、実演のほうに重きを置くであろうから、著作権ではなく、後で述べる著作隣接権に基づく保護がなされる」とするが、確かに講談・落語は古典を演じることも多いであろうが、漫才の場合には、「古典漫才」の取組が近時みられるようであるが、依然として非常に限定的で、自作のネタが大半であろうから、この言及については違和感がある。

[11] さしあたり、末宗達行「お笑いのネタの保護と自由利用」RCLIPコラム(2014年11月)https://rclip.jp/column_j/20141127-2/を参照。また例えば、早瀬久雄「お笑いコントの著作権」弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ(2015年2月20日公開)https://blog.goo.ne.jp/aigilaw/e/a80aa7ba7dd0713509f600db7eff9a83、木本武宏=稲穂健市「志村けん「アイーン」をパクったら違法なのか 一発芸は知財として保護される?されない?」東洋経済オンライン(2017年4月21日公開)https://toyokeizai.net/articles/-/167407?page=2〔稲穂発言〕も同旨。なお、本コラムでは中川家の場合を念頭に置くこととするが、「ラッスンゴレライは著作物となるのか~著作物の成立について 【弁護士が説明する出版法務の著作権法講座②】」出版法務.COM(2015年2月13日公開)https://shuppan-houmu.com/?p=84は、コントの種類によっては音楽の著作物及び舞踊又は無言劇の著作物に当たり得ることを指摘していると解される。(いずれも最終確認:2020年11月24日)

[12] 「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」(NHK)などが挙げられよう。

[13] 「エンタの神様」(日本テレビ系列)、「爆笑レッドシアター」(フジテレビ系列)などが挙げられる。

[14] この規定をめぐっては、創設規定説(加戸・前掲注(10)54-55頁)と、確認規定説(田村善之『著作権法概説』(有斐閣、第2版、2001年)121頁、島並ほか・前掲注(10)149頁〔島並〕、岡村久道『著作権法』(民事法研究会、第4版、2019年)152頁注2、中山信弘『著作権法』(有斐閣、第3版、2020年)303頁)とで見解が分かれている。より詳細な分類の上で議論状況を紹介するものとして、半田=松田編・前掲注(10)259-260頁〔辻田芳幸〕。

[15] コントの模様を動画として収録したものをYouTubeで配信することは、公衆送信に該当する(2条7項参照)。

[16] 渋谷達紀『著作権法』(中央経済社、2013年)30頁、高林龍『標準著作権法』(有斐閣、第4版、2019年)41頁注2。

[17] 渋谷・前掲注(14)57頁、高林・前掲注(14)64-65頁注2。

[18] 知財高判平成20年2月28日判時2021号96頁<チャップリン映画DVD事件控訴審>は、現行法施行以前に公表された映画につき「チャップリンが原作,脚本,制作ないし監督,演出,主役(『巴里の女性』を除く。)等を1人数役で行っており,上記作品は,その発案(『殺人狂時代』を除く。)から完成に至るまでの制作活動のほとんど又は大半をチャップリンが行っているところ,その内容においても,チャップリン自身の演技(『巴里の女性』を除く。),演出等を通じて,チャップリンの思想・感情が顕著に表れているものであるから,映画著作物の全体的形成に創作的に寄与した者はチャップリンであり,チャップリンが旧法3条の『著作者』に当たる」と述べる。上告審においても、「チャップリンがその全体的形成に創作的に寄与したというのであり,チャップリン以外にこれに関与した者の存在はうかがわれないから,チャップリンが著作者であることは明らか」とされた(最判平成21年10月8日判時2064号120頁<チャップリン映画DVD事件上告審>)。

[19] ただし、「〔脚本と演技とでは表現上の思想感情が大いに異なる場合などを念頭に〕そのような演劇については、演技と演出とが融合した全体を脚本の二次的著作物と解する余地があるように思われる」とし、「その著作者は演出家ということになる」と述べる見解もある(渋谷・前掲注(14)69頁)。

[20] 島並ほか・前掲注(10)149頁〔島並〕は「上演…によって新たな創作性が付加されることもあるから、結論としては複製ではなく翻案等と位置づけられることも少なくないだろう。本規定の妥当する範囲は、ごく限られたものになる(本規定を、そのような二次的著作物の作成行為について、あえて翻案ではなく複製と捉える旨の特則である、と考える実益はない)」とする。

[21] 映画祭及び試写会での上映のほか、YouTubeへのアップロードをした自主制作映画について、争点の一つとして原告が当該映画の映画製作者に該当するかが争われた事案として、東京地判平成30年3月19日(平成29年(ワ)20452号)<サイコ&コメディ映画「すたあ」>がある。29条の適用対象に関しては、田村・前掲注(14)394頁も参照。

〈末宗達行(RC)〉