「1日1食」、「グルテンフリー」、「ベジタリアン」・・・・。
巷には様々な食のスタイルがあり、最近では食に関する話題を見聞きすることが多いが、皆さんは何か食へのこだわりをお持ちだろうか。
幼い頃つけていた日記に、「今日は〇〇を食べておいしかった」などと食べ物の話題を多く記録していることが証明するとおり、私は昔から食への好奇心が強く、食べることが大好きだ。1日3食を基本として、そこに間食が加わることも多い。
過去に見た情報番組で、人が一生に食べる(であろう)食事の回数を検証していて(生憎、その検証結果は記憶にないのだが)、その数が想像より少ないと衝撃を受けて以来、それならばできるだけ多く食べたい(量ではなく頻度の点で)と思ったと同時に、毎回の食事を大事にするようになった。とはいえ、食事制限をしているわけではなく基本的には食べたいものを取っている。
そこで今回は食にまつわる2つのエピソードをご紹介したい。
まず1つ目。10年ほど前に体質改善を目的とした料理教室に通っていた時期がある。
摂取したものと体質の変化の関係に何か役立つのではと考え、その頃から現在まで、毎日その日に食べたメニューを全て記録しているが、この食事日誌が思った以上に有益であった。
例えば、献立に悩んだ時には過去にどのようなものを料理したか一目でわかるし、食欲がなかった時期など当時の自分の体調も思い出すことができる。
そして、誰かと食事を共にして楽しい時間を過ごしたことを懐かしむことができるのは何よりも嬉しい副産物であった。
私はわりと、過去に食べたものの味を自然と記憶しているのだが、それと同時に、一緒に食事をした人との会話やその場の雰囲気等もなんとなく頭に残っている。
まわりからは、この記憶力に驚かれることも多いが、幼い頃からの食への好奇心がもたらしたものなのかもしれない。
なお、この料理教室に通ったことで体質改善ができたかどうかについては、残念ながら自分の理想に到達することはできなかったが、風邪をひきにくくなったりプラス面もあった。
当時はオーガニック等、食材にこだわったこともあったが、ストイックになりすぎたことで気持ちが疲れてしまったこともあり、今は自分の納得のいく範囲でのこだわりを持ちつつ食を楽しんでいる。「何事もほどほどがちょうどよい」ということも、この時に学んだ。
2つ目。ひとりでも誰かと一緒でも、おいしく楽しく食事ができることはありがたい。
こう強く思うのには理由がある。
7年ほど前、体調を崩してしまった私は、これまでのように食事ができなくなってしまった。食べたいのに体が受け付けない。この時の絶望感は今でもはっきりと覚えている。そして、メニューに空欄が目立っている上述の食事日誌からも当時の様子が目に浮かぶ。
点滴中、病院の天井を見つめながら、頭の中では食べたい物をあれこれ思い浮かべるのだが、実際に食べようとすると気持ちがついていかない。
いつまでこんな状態が続くのかと先の見えない状況に焦りながらも徐々に回復して、以前のように食事ができるようになったときの喜びは忘れられない。今まで特に意識もせず当たり前のように食事をしてきたが、このことがあって以来は、大げさに聞こえるかもしれないが、1食ごとに感謝の気持ちがわいてくるようになった。
“You are what you eat.”ということわざに納得する一方で、自分が幸せに感じられる食事も同様に大切であるということをこれらの経験を通して実感した次第である。
さて、今日は何を食べようかな?
〈 鵜飼裕子(事務局)〉