はじめに
 この度初めてコラムを担当させて頂きます、法学研究科修士2年の森綾香と申します。どうぞ宜しくお願い致します。さて、近年VR等の技術の進歩やリモートでの人との交流が求められる社会状況により、メタバースが話題となることが増え、RCLIPにおいても「仮想空間の技術・創作の現状と知的財産法」をテーマとしたシンポジウムが開催されたり[1]、本学の知財LLMコースの説明会のイベントとして上野達弘教授により「メタバースと著作権——『メタバース・パラダイス』としての日本?」と題された模擬講義が行われたりもしました[2]
 私自身現在に至るまで、研究会や講演等で同テーマについてのお話を伺ったり、関連する論文を調べて読んだりする機会がありましたが、こと「メタバースと意匠法」というテーマについては、メタバースにおける意匠法の活用は難しいという見方が有力であるような気が致しております。
 そこで今回のコラムでは、「意匠法とメタバース」について、(1)そもそもなぜ日本ではメタバースにおける意匠法の活用が難しいとされるのか、(2)それでは果たして意匠法を活用する展望は全くあり得ないのか、(3)ヨーロッパの制度の紹介、という3点について触れて行きたく存じます。
 
(1)メタバースと意匠法の条文・判例・通説
 メタバースに関連して生じる意匠保護の問題は様々考えられる所ですが、その中でも、例えば現実の高級ブランド時計をスキャンしてメタバース上で精巧に再現したものを意匠権者に無断でメタバース上の店舗でアイテムとして販売するなどの事案、すなわち、現実世界の物(後述しますが、意匠法上の「物品」にあたるもの)をベースとして作成されたメタバース上のオブジェクトに関する、侵害のケースに限定して検討して行きます。(これ以外にも、現実世界の建築の意匠をメタバース上のワールドを作成する機能などで再現するような侵害のケースであったり、メタバース内のお店の内装のデザインを現実上で意匠登録しようと試みるような登録のケースであったりと、意匠の種類と侵害・登録という掛け合わせで他の様々なパターンが考えられることにご留意下さい。)
 以下では、上記現実世界の物をベースとして作成されたメタバース上のオブジェクトに関係する侵害のケースを、【第一類型(Virtual→V)】バーチャル空間にのみ存在するオブジェクトのデザインが、他者によりバーチャル空間で無断使用される。【第二類型(V→Real)】バーチャル空間にのみ存在するオブジェクトのデザインが、他者によりリアルの空間で無断使用される。【第三類型(R→V)】リアルで存在する物品にかかるデザインが、他者によりバーチャル空間で無断使用される。以上の三つにひとまず単純に整理し、これらの三類型に現在の意匠法の条文と判例・通説的解釈を適用してみます。
 
// バーチャルオブジェクトと物品性・画像該当性
 まずそもそも、あるデザインが意匠法で保護されるためには、そのデザインが、意匠法2条1項で定義される「意匠」、すなわち、物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(=形状等)、画像(操作画像・表示画像)又は建築物であって、視覚を通じて美感を起こさせるものでなければなりません。
 また意匠権の効力につき23条が「意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。」と規定しているため、意匠権者が登録意匠の無断使用者に対して権利行使をするためには、第一に、登録意匠の無断使用者が実施している意匠が2条1項で定義される「意匠」(上述と同様)に該当していなければならず、第二に、登録意匠の無断使用者が2条2項で定義される「実施」、すなわち、意匠にかかる「物品」や「画像」を製造・作成等して利用していなければなりません。
 さらに、「物品」の定義ですが、これは解釈上、「有体物たる動産」であり、無体物を含まないとするのが通説となっています[3]
 メタバース等のバーチャル空間上のオブジェクトは無体物であるため「物品」とは言えません。そこで残された可能性として、画像の意匠に該当するか否かが問われますが、2条1項の定義によると画像の意匠は、機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限るとされています。(意匠法では、著作権法と異なり、他者の登録意匠に依拠することなく作成されたデザインであっても、その登録意匠と類似してしまっているならば、権利行使の対象となり得てしまいます。よって、コンテンツ自体が意匠法の保護対象となってしまうと、創作をする際に逐一登録意匠を確認しなければならないことになり創作活動が阻害されるという問題があり、意匠法による保護がコンテンツ自体の保護にならないように、このような限定が設けられているとされています[4]。)すると、機器の操作・表示に関わらないオブジェクト、例えば単なるバーチャル空間上の店でアバターを座らせるための椅子やそこで商品として取引されるような無体的な食べ物のデザインなどは、「画像」に当たらない場合が多いと考えられます。
 以上から、【第一類型(V→V)、第二類型(V→R)】においてはそもそもバーチャル空間上のオブジェクトにかかるデザインが、意匠に該当しないとされてその無断使用が意匠権侵害となり得ない、また【第三類型(R→V)】においては登録意匠のバーチャルでの無断使用が「意匠」の「実施」と言えない行為として権利の効力の範囲外となり侵害にならない、とされるケースが多くなると考えられそうです。
 
// 物品の越境と物品の類似性
 仮に何らかの形で、バーチャル空間上のオブジェクトが物品や画像に該当するとされたとしても、【第二類型(V→R)、第三類型(R→V)】では依然としてデザインの無断使用に対する権利行使にはハードルが残っています。
 意匠権の効力を規定する23条は「登録意匠及びこれに類似する意匠」を実施することに意匠権が及ぶとしているため、登録意匠と無断使用による意匠が「類似」していることが求められます。この点、最高裁判例である可撓伸縮ホース事件[5]は、その判決文中で「意匠権の効力が、登録意匠に類似する意匠すなわち登録意匠にかかる物品と同一又は類似の物品につき一般需要者に対して登録意匠と類似の美感を生ぜしめる意匠にも、及ぶものとされている(法二三条)」(強調は引用者による)と述べていることから、物品の類似性は意匠の類似性の要件となるとの理解を示したと読めます[6]。また意匠審査基準においても、「意匠は、物品等と形状等が一体不可分のものであるから、対比する両意匠の意匠に係る物品等が同一又は類似でなければ意匠の類似は生じない。」とされており、意匠の類似を判断する要件として、「物品等の用途及び機能が同一又は類似であること」が挙げられています[7]
 この点をメタバースについて考えますと、【第二類型(V→R)、第三類型(R→V)】では、登録意匠と無断使用による意匠との間において、仮に無体物でも物品とされた場合は物品につきリアルとバーチャルでの越境が生じるため、また、仮にバーチャル上の意匠が「画像」に該当するとされた場合は「物品」と「画像」という別種を比較しなければならなくなるため、結果として物品等の類似が認められず、意匠の類似が否定される可能性が高いように思われます。
 
(2)果たして意匠法を活用する展望は全くあり得ないのか
 上記で見てきたように、特に画像意匠から外れるデザインに関しては、条文・判例・通説的解釈に基づくと、メタバースにおいて意匠法を活用していくことは現状極めて難しいと言えそうです。一方、上記の理解を裏返して捉えれば、①(「画像」に該当しないものにつき)無体物たるバーチャル空間上のオブジェクトが、意匠法上の「物品」に含まれるとの解釈がなされるなどして「意匠」該当性をクリアし、これに加えて、②そのようなバーチャル空間上のオブジェクトたる「物品」や「画像」とリアルでの「物品」が類似していると解釈されるか、又は、そもそも物品の類似を意匠の類似の判断における要件として厳格に求めないよう解釈されるかのいずれかがなされれば、現行法の条文の文言から脱することなく、バーチャル空間上のオブジェクトのデザインの保護やリアル・バーチャルの越境がある無断使用行為の捕捉が可能になったりするということです。
 この点、①に関しては、「物品」が有体物であるというのは民法上の「物」の概念を敷衍した解釈であるが(民法85条)、意匠法において、「特に民法的概念に拘泥すべき理由もない」と指摘した上で、物品の解釈としては、「①機能を備える物であって、②原則として動産として取引に供されるものをいうが、画像以外の無体物を含む余地のあるもの」とすべき旨の指摘がなされていたり[8]、「明治 21 年の意匠条例から大正 10 年法までは,『物品』と『意匠』とは別個の概念とされており」、「『物品』が『意匠』の構成要素となったのは現行法からであって」、「意匠法において『物品』 を『意匠』の構成要素としなければならない必然性はない」とした上で、「審査において形態と機能との関係を重視することは大賛成だが、『形態』=『物理的な物品の形態』と捉える必然性はない」とする歴史的な観点からの指摘がなされていたり[9]、また、3Dスキャナ・3Dプリンタ・3Dデータについての考察を行う文脈において、「今後3Dスキャナや3Dプリンタ、拡張現実や仮想現実といった領域での3Dデータの利用が進んでいくと考えられる中で、ここでは、意匠法による規制が(意匠の物品性に基づき)有体物を伴う場合にとどまってよいものか、議論の対象となろう」として問題提起がなされたりもしています[10]
 ②に関しては、物品の類似性に関する実務の趨勢を分析し、物品の類似性は条文上の要件ではなく解釈上要求されているものであることを指摘した上で、物品の類似性を求める解釈について複数の根拠を整理し、最終的に検討として、「いずれかの根拠を是とすれば、要件として必要と理解されよう」とする一方で、「いずれの理由も批判的な検討を加えることが可能であり、(実務上の影響はともかく)現行法において、物品の類似性は、意匠の類似性の、少なくとも要件ではないとすることも可能であろう」と指摘する論考も存在します[11]
 以上より、解釈論によってメタバースにおける意匠法の活用を可能とすることは、全くの不可能であるわけではないとも言えそうです。また、立法論として、例えば上記のような解釈を採用して明文化したり、「画像」の定義を拡張したりなど[12]、保護が強化されて行くことも、可能性としては、考えられる所です。
 
(3)メタバースの問題と関わり得るヨーロッパ意匠法の規定について
 ここで少々、ヨーロッパの制度に目を向けてみます。ヨーロッパでは、「製品」(日本の物品のような概念で、英語ではProduct)には無体物を含むと解されています。特にドイツにおいては「画面表示およびアイコン[13]」の意匠として無体物が製品に読み込まれるとされています[14]
 また、出願時に記載する製品によって意匠の保護範囲が制約されない旨明文化されていることから(欧州意匠規則36条6項[15])、意匠の類似には製品の類似が要されないと言えます[16]。実際に1995年のドイツ最高裁判例[17]では、乗用車意匠とおもちゃ車意匠との類似関係を物品カテゴリの制約を超えて認められています[18]
 さらに、「事情に通じた使用者に対して異なる全体的印象を与えない」範囲(欧州意匠規則10条1項[19])における「複製行為」(同規則20条1項(c) の反対解釈による[20])にまで意匠権の保護が及ぶとされています。これらの規定を用いて、例えばドイツでは意匠登録された列車をパンフレットに掲載した事件において[21]、フランスでは登録意匠された傘につき当該傘のミニチュアをマネキンに持たせて宣伝用のビジュアルに用いた事件において[22]、それぞれ「複製行為」による意匠権侵害が認められています。
 まるで物品を離れた抽象的なデザインの複製を規制するかのような結果となっている点、欧州意匠法と日本意匠法との決定的な差異があらわれていると言えるでしょう。著作権制限規定に内容が似ているような意匠権の制限の規定が存在していることも併せて鑑みれば、欧州において意匠法は、日本法に比べれば多少なりとも著作権法に接近した性質を持ち合わせているようにも思われます。
 メタバースの事案においては、日本法のようにバーチャル空間上のオブジェクトが無体物であるからといって一律に意匠法による保護が不可能となることもなく、また【第二類型(V→R)、第三類型(R→V)】における物品を越境した無断使用行為等も捕捉し得ることから、日本と比してメタバースでの問題について意匠法が適用し易い状況にあると言えそうです。
 
おわりに
 「メタバースと意匠法」へのアプローチとしては、解釈論にしても立法論にしても、様々なオプションが考えられますが[23]、それぞれ問題点があります。
 例えば、解釈論として、単純に物品に無体物を含むとして広い解釈をしてしまえば、【第一類型(V→V)、第二類型(V→R)】においてバーチャル空間上のオブジェクトのデザインが、画像意匠に該当する場合を除き、一切意匠登録できないという事態が回避されたり、【第三類型(R→V)】(登録意匠を無断使用した者による意匠が画像の意匠に該当する場合を除く[24])において、「意匠」の「実施」にそれぞれ該当せず権利行使ができないという問題が回避されるたりする反面、無体的なデザインが広範に保護され、上述の画像意匠における「コンテンツ保護」の懸念、著作権法と意匠法の分担に関する懸念が、生じてくることとなります。また同様の解釈をとる場合において、無体物にかかるあらゆる意匠につき、その物品を(ドイツが「画面表示及びアイコン」として一纏めにしているように)意匠分類の中でグラフィックデザインなどと一つのカテゴリに括ってしまって良いのかという点も、疑問が残る所です。
 他にも、リアルの物品とバーチャルの物品の越境があっても権利行使ができるようにしたいからと言って、意匠の類似が物品の類似を要件として要求しない解釈をとってしまうと、例えば自動車の登録意匠をおもちゃのミニカーの意匠として無断使用する場合のように、従来から権利行使が否定されてきた、リアルのとある物品からリアルの別の物品という越境が存する場合にまでもその解釈の影響が及んでしまうのか、という問題が生じることも考えられます。
 立法論として、ヨーロッパの考え方を参考にするとしても、欧州型の制度は日本の現行の運用と反するものであり、まず実務に混乱を招くことになりますし、そもそもの意匠法の保護対象や法目的や文化などの根本的な差異を無視して、単に制度を輸入することなどそもそも許されないでしょう。
 また、本コラムでは話を想像しやすくするために現実世界の物をベースとして作成されたメタバース上のオブジェクトに関する侵害のケースに限定して話を進めて参りましたが、建築物の意匠や内装の意匠、そしてリアルで画像意匠として登録されている意匠など他の意匠の種類が関わってくる場合や、登録の場面なども含めた広い検討が必要ですし、他にも著作権の応用美術の論点との関係、不正競争防止法、商標法など他法との兼合いや、国際裁判管轄や準拠法の問題についても検討の必要があります。さらに、日本意匠法の将来につき様々な選択肢が採られ得るものであったとしても、ある選択肢を採用すべきとするならば、その積極的な理由付けも必要となってくる所です。
 「メタバースと意匠法」は今現在ホットなテーマであり[25]、同時に、従来からの「物品」や「実施」など伝統的な意匠法の概念に新たな角度から視点を向けさせ再考を迫るものとして大変興味深いテーマです。今回のコラムは「メタバースと意匠法」と題しながらも実際のメタバースの事例には触れられず、基礎的・準備的な話にとどまってしまいましたが、今後、国内外の動向に注目しつつ研究を続けて参りたく存じます。
 
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[1] https://rclip.jp/2022/03/24/20220423seminar/(最終閲覧日2022年8月24日)
[2] https://www.waseda.jp/folaw/glaw/6777/(最終閲覧日2022年8月24日)
[3] 寒河江ほか編『意匠法コンメンタール〔新版〕』(勁草書房、2022年)〔五味飛鳥〕27頁
[4] 『意匠・デザインの法律相談I』(青林書院、2021年)210頁〔五味飛鳥〕では「このように保護対象が限定された背景には、コンテンツ等に対する保護を認めると著作権による保護との交錯が生じるといった事情があります。」とする一方で、「その線引きは容易ではなさそうです。」「コンテンツ画像や装飾的画像はそれ単体では保護対象にはならないにせよ、単純には、これら画像を意匠の構成要素から常に除外して考えるとまではいい難い点に注意が必要です。」と説明されている。
[5] 最判昭和49・3・19民集28巻第2号308頁[可撓伸縮ホース事件]
[6] 青木大也「意匠法における物品の類似性について」論究ジュリスト7号(2013年)166・167頁
[7] 意匠審査基準 第Ⅲ部 第2章 第1節 2.2.2(最終閲覧日2022年4月29日)https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/shinsa_kijun/document/index/isho-shinsakijun-03-02-01.pdf
[8] 寒河江ほか編・前掲注(3)〔五味飛鳥〕29-33頁
[9] 峯唯夫「『デザイン』と『意匠法』——『デザイン経営』に資する『意匠法』を考える契機として——」(特集 意匠) パテント71巻12号(2018年)5-14頁
[10] 青木大也「意匠法とデザインの無体的利用, 無体物のデザイン – 著作権法との比較において」ジュリスト1511号(2017年)76-81頁
[11] 詳しい内容については、青木大也「意匠法における物品の類似性について」論究ジュリスト7号(2013年)166-172頁参照。
[12] NFTの画像の意匠権保護という文脈において、メタバースにおける意匠問題に関連して、新たな画像の登録可能類型を追加することに反対する見解として、田村善之「『知的財産制度の検討課題について』に対する意見」特許庁政策推進懇談会 懇談会メンバーからの提出資料及び有識者からのプレゼンテーション資料・4頁参照。(最終閲覧日2022年8月24日)https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kenkyukai/kondankai/document/index/02.pdf
[13] 欧州意匠規則上の、3条b項「グラフィックシンボル」に相当。
[14] 本山雅弘「欧州・ドイツにおけるデザイン保護の動向とわが国の意匠法への示唆——「物品」の位置づけをめぐって——知財管理69巻4号(2019年)585頁
[15] 共同体意匠に関する 2001 年 12 月 12 日の理事会規則 No.6/2002  2012 年 4 月 24 日 L112/2012 により改正(翻訳は以下を参照。https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/ec6_02j.pdf)
第 36 条 出願書類が遵守すべき条件
(1) , (3)ないし(5) 略
(2) 更に,出願書類には,その意匠を組み込む予定であるか又は適用する予定である製品の表示を含めなければならない
(6) (2)及び(3)(a)及び(d)に記載した構成要素に含まれる情報は,意匠自体に関する保護の範囲に影響を及ぼさないものとする。
[16] 本山・前掲注(14) 586頁
[17] BGH, Urteil vom 19.5.2010, GRUR 1996, 57. – Spielzeugautos.
[18] 本山・前掲注(14) 586頁
[19] 第 10 条 保護の範囲
(1) 共同体意匠によって与えられる保護の範囲には,事情に通じた使用者に対して異なる全体的印象を与えない意匠を含めるものとする。
(2) 保護の範囲を評価するときは,意匠を創作する際の意匠創作者の自由度を考慮するものとする。
[20] 第 20 条 共同体意匠によって付与される権利についての制限
(1) 共同体意匠によって付与される権利は,次の行為に対しては行使することができない。
(a) 私的に,非商業目的で行われる行為
(b) 実験目的で行われる行為
(c) 引用又は教授の目的での複製行為。ただし,当該行為が公正な取引慣行に合致しており,かつ,その意匠に係る通常の利用を不当に害さないこと,及びその出所についての言及がされることを条件とする。
(2) 略
[21] BGH, Urteil vom 7. 4. 2011 – I ZR 56/09 – ICE
[22] Cour d’appel Paris, Pôle 5, chambre 2, 27 Novembre 2015 – n°13/21612
[23] コラムにしてはかなり文章量が多くなってしまいましたので、日本意匠法の取り得る選択肢及びそれ対する考察についてはここでは省略し、改めて修士論文にて執筆しようと存じます。
現在、同問題に関して日本意匠法がとり得る選択肢に言及している資料としては、以下の資料を参照。
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所「海外におけるデザイン・ブランド保護等新たな知財制度上の課題に関する実態調査 調査報告書」令和4年2月(最終閲覧日2022年8月24日)https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/reiwa3_itaku_designbrand.pdf 
青木大也「NFT化した画像データの意匠権保護」特許庁政策推進懇談会 懇談会メンバーからの提出資料及び有識者からのプレゼンテーション資料(最終閲覧日2022年8月24日)https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kenkyukai/kondankai/document/index/05.pdf
[24] ここで【第三類型(R→V)】のうちでも、登録意匠を無断使用した者による意匠が画像意匠に該当する場合を除外したのは、第一に「意匠」の文言について、画像意匠の場合は物品性など問わずとも「意匠」該当性が認められますし、また第二に「実施」の文言について、画像意匠の場合は2条2項3号の画像の作成等に該当するか否かが問われるのであって、当該意匠の物品該当性は問題とならないためです。
[25] 読売新聞オンライン「アバターの肖像権どうする?…「メタバース」の法的課題、政府が検討会で議論へ」(最終閲覧日2022年8月24日)https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220823-OYT1T50147/amp/
 
 
〈 森 綾香(RC)〉