ご縁あって今回のコラムを担当させて頂くことになった。
さて、今回はご縁というものをテーマにしてみる。RCLIPとのご縁は、2013年の冬、RCLIPと私が所属する大阪大学知的財産センター(以下、IPrism)の共同シンポジウムの初開催で、デュッセルドルフ高裁のトーマス・クーネン判事が来日され、Rademacher先生ともに事務局を担当した。まさかその1年後に東京で研究を行うことになるとは、全く想定していなかった。
昨春、知的財産研究所の研究者助成を受けることになり、東京に出向くことになった。大阪生まれ大阪育ちの私には、ちょっとした冒険である。そして、ご縁あって高林先生にご指導を頂く機会も得た。そんな巡り合わせから早稲田の精鋭高林ゼミと相見えることになったのである。
そこには様々なバックグラウンドをもった多様なメンバーで構成され、バラエティーに富んだ魅力的な研究が毎週展開されていた。ふと以前にセレンディピティの講義をうけたことを思い出した。セレンディピティとは、偶然に想定外の発見を見いだす力をいう。偉人の大発明やノーベル賞をとられた研究においても偶然の巡り合わせから生まれたものも少なくないという。しかし、科学の分野だけでなく、これに似た感覚は我々の研究にもあてはまるかもしれない。そんな「気づきの力」を育む環境がこのゼミにはあった。例えば、米国の研究では、一旦米国人になりきって考える。同様に英国人になりきる場合もある。高林先生の豊かなご経験と院生のひらめきが、化学反応を起こしているかのようにも感じ、拝聴している側もなぜかモチベーションが上がってくるのだ。そうして一方方向な考え方を脱却して、その先に何かを見いだした人の生き生きとした発表は、興味深いものであることは言うまでもない。
この一年間、高林先生ならびに高林ゼミ生の皆様には、門下外であった私を快く受け入れて下さった、厚くお礼を申し上げたい。そして、今後もこのご縁はより深いものとなっていくだろう。東京を後にする最後の締めくくりとして、このコラムへの投稿は、今後につながるパスポートのようにも思うのである。知財の巡り合わせの一つ一つを大事にこれからも研鑽を積んでいきたいと思う。
早稲田大学RCLIPと大阪大学IPrismの益々の繁栄を願って。
(知財研 特別研究員 吉田 悦子)