コラムとして初投稿させていただきます弁理士の吉田と申します。
最近の知財業界に関する実務家としての私の実感を述べたいと思います。
私は、1980年代半ばより日本の総合電気メーカーの半導体研究開発のエンジニアとして、また、事業部の管理職として、半導体産業に従事してきました。日本 の半導体産業にとって、80年代を「躍進の時代」とすれば、90年代は「不本意な?敗退の時代」でした。私にも、開発責任者として技術の知的財産面で戦略的活用方法を十分に理解しておらず、自社で開発し、当時高い評価を受けた技術をうまく利益に繋げることができなかったという苦い経験があります。
そこで、先端技術分野における知的財産戦略を研究し、日本の会社(特に、半導体関係)が活力を取り戻す力をつけたいと考え、会社を辞めて早稲田大学の大学院に入りました。在学中に弁理士の資格を取得し、大学院の修了後、事務所勤務を経て、一昨年、新宿に特許事務所を開設するに至りました。
日本の知財業界を概観すると、特許出願自体は、2008年のリーマンショック以降減少傾向にあります。この原因は、主に電機メーカーや自動車大手の出願数が減少していることによるものです。
一方で、その間のPCT出願は一貫して増加しています。また、特許査定率も、その間増加し続けています。
卑近な例で恐縮ですが、私が相談や依頼を受ける案件も、以前のような研究所で出てきたシーズを単純に出願するケースは減少しており、実用化(製品化)に結びついているものや、実用化を想定したものが圧倒的に増えてきていると感じます。
これらの状況から判断して、日本の産業界において、知財の重要性は益々高まっており、企業は1つ1つの出願の有効活用を考え選択しつつ、重要な案件(海外展開も含めて)に資金を集中しつつある、と言えるのではないでしょうか。このような状況下での実務家は、各企業の経営戦略を理解しつつ、有効な活用方法の提案が出来るよう精進すべきと考えます。
RCLIPは今年から、理系(研究・開発)と文系(法律、経営)の融合と、アカデミックと実務の融合を目指す、プロジェクト研究所としてスタートする予定です。私もかつで早稲田で学んだ者として、また実務者としてのスタンスからも一助を担えればと思います。
(RC 吉田 正義)