少子高齢化社会が到来し、18歳人口が年々減少しているため、どの大学も志願者を増やそうと悪戦苦闘している。私の本務校である東洋大学も例に洩れず、入試部が「学びLIVE」や「オープンキャンパス」といったイベントを積極的に開催して、現役高校生に大学を知ってもらおうと日々努力を重ねている。また、出張講義と称して、大学教員が全国各地の高等学校に赴き、50分の授業を行うという広報活動も展開している。
 このようなイベントや広報活動には、当然に大学教員の自主的かつ積極的な協力が不可欠である。現役高校生に「この大学の授業は面白い」とか「この大学の先生に習いたい」と思わせるような授業をしなければ、イベントを開催した意味がない。つまり、大学教員は何の予備知識もない高校生に分かりやすい授業をすることが求められるのだ。これは高校での教員経験がない大学教員にとっては、なかなかハードな試練である。
 幸い、私は大学卒業後2年間、高校の教師をやっていた。とある私立学校で社会科(正確には日本史と政治経済)を教えていたのである。この経験が30年後に活きてくるとは、当時は想像もつかなかった。さらに私の専門は音楽著作権なので、万人受けするテーマを持っている。ずばり「夢の印税生活」である。どんな人でも一度は印税生活を夢見るだろう。したがって、私は必ずこのテーマで高校生向けの授業をすることに決めている。
 講義の内容は、音楽ビジネスにおいて音楽著作権がどのように機能しているかを説明するものだが、冒頭で紹介するのがオリコン・ベストテンとJASRAC国内分配額ベストテンである。両者の曲のラインアップがかなり異なることを示すと、高校生は一様にびっくりする。そして、放送、CM、カラオケ、出版、コンサートにおける音楽の使用に対しても、著作権使用料が支払われていることを知ると、ランキングの順位に納得して帰っていくのである。
 興味深いことに、最近は高校生が親と一緒に授業に参加することが増えている。私が高校生の時は反抗期真っ盛りだったので、親と一緒に外出するなんてあり得なかった。仲良く授業を聞いている姿を見ていると、もう少し親孝行をすれば良かったと反省しきりで授業をするのである。親同伴の場合、高校生だけに焦点を当てるのはよろしくない。やはり、ここは親御さんにも大学のファンになってもらわねばと、そちらの世代にも受けるネタをいくつか用意している。なかなか大学教員も涙ぐましい努力を重ねているのである。
 誰もいなくなった教室で、参加してくれた高校生の感想文を読みながら、これからも一人でも多くの高校生の好奇心を刺激して、知的財産法の世界に興味を持ってもらおうと思う今日この頃なのである。

(知的財産法制研究所招聘研究員 安藤 和宏)