中国の知的財産権分野における信義則の立法と適用 (秦 玉公)

前書き

信義則は、市場経済活動の中で形成された道徳規則である。それは、市場活動において信用を重んじ、約束を守り、誠実で欺かず、他人の利益と社会の利益を損なわないことを前提として自分の利益を追求することを要求する[1]。信義則は道徳規範と法律規範を一体化し、法律調節と道徳調節の二重機能を兼ね備えているため、その法律条文に極めて大きな柔軟性を持たせている。このため、裁判所は比較的大きな裁量権を有し、場合により、信義則に基づき、当事者の自治までを排除して当事者間の権利義務関係を直接調整することができる。したがって、信義則は、現代民法の最高指導原則とされ、学者からは「帝王条項」と呼ばれている[2]

知的財産権は民事権利の重要な構成部分であり、民事主体が知的財産権に関連する活動を行う際にも信義則に従うべきである。中国では、経済社会の絶え間ない発展と科学技術の水準の向上に伴い、知的財産権に関連する活動がますます活発になり、「帝王条項」とされる信義則は、知的財産権の分野においてますます重要な役割を果たしている[3]

一、     中国の知的財産権分野における信義則の立法背景と現状について

『中華人民共和国民法典』第七条では、民事主体が民事活動を行う際に信義則を遵守し、誠実であり、約束を守るべきことが明確に規定されている。また、『中華人民共和国民事訴訟法』第十三条第一項は、「民事訴訟は信義則に従うべきである」と定めている。すなわち、信義則は、実体法規範のみならず、訴訟活動における行為規範としても、機能するものである。信義則の本質について、史尚寛先生は利益平衡説を主張し、即ち、信義則は各方の利益を公正に平衡するもので、当事者の利益のみならず、社会の一般公共利益も考慮に入れるべきである[4]。徐国棟先生も、当事者と社会の利益関係において、信義則は、当事者が自らの活動を通じて第三者や社会の利益を損なってはならず、その社会経済目的に適合した方法で自らの権利を行使することを求めると考えている[5]。このように、中国の学界では一般的に、信義則が当事者間の利益および当事者と社会の公共利益との間の利益を調整する重要な原則であるとされている。

知的財産権は私権の根本的な属性を有し、民事権利体系の一部であるため、民事制度の関連学説と理論は、知的財産権の制度および規則に理論的な支えを提供し、知的財産権の法律救済体系を整える上で重要な補完的役割を果たす[6]。中国の知的財産権の分野に信義則が正式に条文化された前に、関連する部門法には信義則をある程度反映した条項が存在していた[7]。しかし、中国の社会主義市場経済の発展に伴い、新しい状況や新しい問題が絶えず現れ、特に商標や特許の分野において、商標の先取り出願や不正な特許出願などの誠実性に欠ける現象が頻発していた。

そのため、中国は2013年に商標法を改正した際、信義則が明文化されるようになった。即ち、その第七条に、「商標の登録出願及び使用は、信義則に従わなければならない」という規定を第一項として追加した。改正案の審議の過程において、ある専門家は次のとおり指摘した。即ち、商標分野において、信義欠如現象が際立っており、例えば譲渡による利益を目的とする商標出願、悪意による先取り出願、悪意のある異議申立、偽造証拠による著名商標の「製造」などは、いずれも信義則に対する違反である。商標法改正案草案に追加された「商標の登録出願及び使用は、信義則に従わなければならない」という規定は、これらの問題に対処するためのものであり、とても的を射ている[8]

同様に、中国は2020年に特許法を改正する際にも、「特許出願と特許権行使は信義則を遵守しなければならない。特許権を濫用して公共の利益又は他人の合法的権益を損なってはならない」という内容を新しい第二十条として追加した。国家知識産権局はこの条項の改正について次の通り説明した。現行の特許法には、特許権の行使を制限する制度、例えば強制許諾、権利侵害とはみなさない規定などが含まれているが、上述の規定を統括する基本原則が欠けているため、人民法院が一部の事件を審理する際、および、行政機関が関連下位規範を制定する際に十分な法的根拠が欠如している。特許法に原則的な条項を追加し、特許権の濫用を規制し、特許権者の利益と社会公共の利益をバランスさせる基本的な立場を体現する必要がある[9]とされている。

信義則が条文化された商標法、特許法と対照的に、中国の著作権法は信義則を明確に規定していない。権利の取得方式から見ると、著作権はその創作により自動的に成立するものとして、国家機関の審査を通じて権利付与される商標権、特許権とは異なるため、出願段階における商標の先取り出願や特許の不正な出願等の不誠実現象は発生しない。また、権利の独占排他性の視点から見ても、著作権は、相対的独占権にすぎず、絶対的独占権としての特許権と商標権と異なっている。具体的に比較すれば、特許法では同一の発明創造には一つの特許権しか付与されえなく、商標法では商標権の排他的効力がその指定商品又は役務、またはそれに類似する商品または役務について、登録商標と同一の商標またはそれに類似する商標に及ぶのに対して、著作権法は文化の多様性を追求しているため、著作権の排他性が特許権及び商標権より弱い。そのため、著作権者が著作権を濫用する前提条件が先天的に不足しているため、著作権者が事実上その著作権を濫用できる可能性は大きくなく、実務において著作権が濫用されるケースもめったに見られない。なお、著作権濫用の現象が発生したとしても、既存の著作権法、民法、独占禁止法などに基づき問題を解決することができる[10]。しかし、人工知能時代の到来に伴い、スマート時代の文化革新と著作権運営の良好な生態を保障する視点から、商標法と特許法のように、著作権法においても、著作権の取得と行使は信義則に従うべきであると明確に規定すべきであると提唱している学者もいる[11]

 二、     中国知的財産権分野における信義則の具体化について

(一)       商標分野における信義則の具体化

『中華人民共和国商標法』(2013年改正)及び現行の『中華人民共和国商標法』(2019年改正) 第七条はいずれも、「商標の登録出願及び使用は、信義則を遵守しなければならない」と規定されている。

中国の商標分野は登録取得制度を実行し、商標権の取得を登録とリンクすることは、商標の識別機能が商業使用において生じ強化されてくる本質と合致しないため、固有の欠陥が存在し、先取り出願、悪意の異議、悪意の取消しなどの不正行為がこれに起因する[12]。他人の商標を横取りするなどの不誠実行為を効果的に抑制するため、2013年の商標法改正において、改正案草案の第二次審議稿は、「商標の登録出願及び使用は、信義則に従わなければならない」という内容を元の商標法第九条第二項の規定として追加していた。しかし、全国人民代表大会常務委員会による第3回審議において、元の商標法第九条は商標登録に関する規定であり、信義則は商標登録及び使用がいずれも遵守すべき重要な原則であるので、第九条に置くのは適切ではないと専門家に指摘された。そこで、改正商標法は、それを第七条第一項の規定とした[13]。これにより、信義則の条項が商標出願と使用の全過程を統括する重要な法的根拠と位置付けられている。

(二)       特許分野における信義則の具体化

2020年に改正された『中華人民共和国特許法』第二十条は、「特許出願及び特許権行使は信義則を遵守しなければならない。特許権を濫用して公共の利益又は他人の合法的権益を損なってはならない。特許権を濫用し、競争を排除又は制限し、独占行為を構成する場合、『中華人民共和国独占禁止法』により処理する」と規定している。

これに合わせて、2023年12月11日に改正された『中華人民共和国特許法実施細則』は第十一条として、「特許出願は信義則を遵守しなければならない。各種特許出願は実際の発明創造活動を基礎としなければならず、ごまかしてはならない」という条項が追加された。また、同条は、方式審査、実体審査及び無効審判の具体的な法的根拠として明文化されている[14]。なお、信義則の適用基準をさらに規範化するため、国家知識産権局は『特許出願行為を規範化する規定』を制定し、内容が明らかに同じである複数の特許出願を一括提出し、実験データを捏造し、先行技術を寄せ集めることなどを異常出願行為として規定している[15]。さらに、新たに改訂された『特許審査指南』において、「特許法実施細則第十一条に規定された審査に適合するか否かについては、『特許出願行為を規範化する規定』を適用する」と規定されている[16]。これにより、中国の特許出願手続において、虚偽·捏造·盗作等の異常出願を取り締まることを核心とする信義体係が基本的に形成されている。

特許権を行使する過程における不誠実行為とは、悪意のある訴訟、虚偽の訴訟等の訴訟権利を濫用する行為を指す。これについて、最高人民法院は関連する発表会で次の通り説明した。「特許権の行使に関わる悪意のある訴訟には、主に以下のような表現がある。第一に、特許権が存在しないことを知りながら、例えば特許権がすでに特許年金未納により終了されたとしても、特許権侵害訴訟を提起する。第二に、他人がすでに公開販売した製品の技術方案を悪意をもって特許出願した後、特許侵害訴訟を提起する。第三に、発効済みの裁定や判決が特許権侵害を構成しないと認定した場合、同一の特許権で同一の被疑権利侵害行為に対して再び特許権侵害訴訟を提起すること、あるいは双方の紛争が実質的に解決されたのに、再び訴訟を起こす」[17]。また、2021年6月に『知的財産権侵害訴訟において被告が原告の権利濫用を理由に合理的な支出の賠償を請求する問題に関する最高人民法院の回答』(法釈[2021]11号)は、さらに問題を明確にし、知的財産権侵害訴訟において、被告が証拠を提出し、原告の提訴が法律に定める権利濫用に該当し、その適法な権益を損なったことを証明して当該訴訟において支払った合理的な弁護士費、交通費、食事代や宿泊費等の支出の賠償を法により原告に請求した場合においては、人民法院は、法によりこれを支持する。被告は、上記の合理的支出の賠償を別途訴えて原告に請求することもできる。また、特許分野における「禁反言の原則」の適用も権利者の信義誠実に対する要求を表している[18]と規定している。

 

三、     判例から見た信義則の適用

(一)       商標分野での信義則の適用に関する典型事例

商標の権利付与と権利確定事件および商標権侵害事件では、中国の司法実務における信義則の適用基準には多少異なっている[19]

商標の権利付与と権利確定事件において、信義則は通常具体的な法律規定の補充として用いられる。例えば、(2015)知行字第116号事件において、最高人民法院は、異議を申立された商標が引用商標と類似し、商標法の規定に合致しないと認定したとともに、関連商標を登録し、使用する際には、信義則を遵守し、他人の商標の知名度及び良好な商業信用を悪意的に利用するのではなく、合理的に回避しなければならないことをさらに指摘した。同業他社が他人の商標を知り、又は知るべきであるにもかかわらず、悪意をもってこれに類似する商標を登録出願し、使用した場合、このような行為によって形成された「市場秩序」又は「知名度」を依然として認めたら、同業他社が信義則に背くことを奨励することに等しく、「商標専用権への保護」という商標法の立法趣旨に反する[20]

商標権侵害事件において、信義則は通常、直接適用可能で、権利濫用行為への規制の法的根拠となる。指導的判例82号「歌力思」商標事件において、最高人民法院は、信義則はすべての市場活動参加者従うべき基本準則であり、他人及び社会公共の利益を損なわない前提の下で、善意的で、慎重に自分の権利を行使することは当事者に求めると認定した。非善意で取得した商標権で歌力思会社の正当な使用行為に対して提起した権利侵害の訴えは、権利濫用を構成し、これに関連する訴訟請求は法律の支持を得てはならない[21]とされた。

(二)       特許分野での信義則の適用に関する典型事例

特許権の権利付与と権利確定手続において、信義則は主に異常出願行為を規制するために用いられている。特許法、特許法実施細則及びそれに関連する規定が改正されたばかりであるため、現時点で、信義則に違反して無効と宣告される典型的な事例はまだ多くない。しかし、行政手続において、国家知識産権局は異常な特許出願の典型的な事例を発表し、「代理機構が盗作、でっち上げの特許出願を提出する」、「代理機構が虚偽の住所や連絡先を用いて特許出願を提出する」、「組織的に特許をでっち上げ、転売する」等の典型的な不誠実行為を列挙している[22]

また、特許侵害事件において、信義則は主に悪意のある訴訟などの不正な権利行使を規制するために用いられる。(2022)最高法知民終1861号事件において、最高人民法院は、悪意による知的財産権訴訟は、以下の構成要件を満たさなければならないと判示した。即ち、1.提起された訴訟は明らかに権利基礎又は事実根拠が不足している。2.原告はこれを知っている。3.他人に損害を与える。4.提起された訴訟と損害結果との間に因果関係が存在する。特許権者は、関連特許権が特許年金未納等の原因により終了したことを知りながら、依然として特許権侵害訴訟を提起し、他人に損失をもたらした場合、悪意による知的財産権訴訟に該当すると認定できる[23]。(2022)最高法知民終139号事件において、最高人民法院は、特許権者は特許権を行使する過程において信義則を遵守しなければならず、権利者があるプロジェクトに参加し、自発的に特許技術を提供する場合、プロジェクトにおいて当該技術を実施又は使用した関係者に関連特許の状況を開示しなければならないと認定した。権利者が故意に上述の事実を開示しなかった場合、そのプロジェクト実施主体が当該プロジェクトの範囲内で特許技術を実施及び使用することを黙示許諾し、関連特許について権利を主張する権利がないと推定することができる[24]と判示された。

また、信義則に対する理解が深まるにつれて、一部の事件では、原告が信義則に違反し、権利濫用に該当することは被疑侵害者が抗弁理由にすることができる。(2022)最高法知民終124号事件において、最高人民法院は、権利を濫用してはならないことは信義則の体現であり、民事権利行使の基本的要求であると認定した。特許権侵害事件において、特許権の安定性と有効性は特許侵害事件を審理する前提と基礎である。人民法院が、被疑侵害者による権利濫用又は特許権無効性抗弁について見て見ぬふりをし、審査しないまま、依然として被疑侵害者が権利侵害責任を負うと認定すれば、それは明らかに公平の原則に反し、真の価値ある発明創造を奨励するのにも役立たない。無効と宣告される可能性が極めて大きいことを証明できる証拠がある特許権について、人民法院は権利侵害事件について訴訟中止を裁定することもできるし、必要に応じて訴えを棄却する裁定を下すこともできる[25]

 

四、     中国における日系企業の知的財産権業務に関するアドバイス

当事者間の利益及び当事者と社会の利益をバランスさせる重要な法律規定として、信義則は中国の司法実践における重要性がますます高まっている。上記の信義則の立法背景、具体的な条文及び典型的な事例の解釈と合わせて、日系企業は以下の面で適切に対応し、関連リスクを回避し、信義則を十分に運用して自身の合法的権益を守ることができる。

1.権利付与と権利確定手続において、出願のコンプライアンス要求を十分に重視し、ハイレベルな代理機構を選択する。商標業務において、自社の標識に関連する権利上の障害をなるべく早く調査し、他人の先行商標と類似する標識を使用したせいで、自社商業信用の蓄積が無効になるリスクを回避する。特許業務において、異常出願の具体的な表現形式を十分に理解し、異常出願行為の発生を回避する。まだ権利付与されていない同業他社の特許出願に対して、公衆意見を活用し、同業他社による特許権の取得を早期に阻止する。また、権利付与された同業他社の特許については、データの信憑性などの観点から、無効審判宣告を請求することができる。

2.権利侵害手続において、権利者としては、信義則の構成要件を正確に把握し、権利を合理的に行使する。抗弁者としては、信義則の本質を十分に理解し、抗弁主張を提出するとともに、相手方の不誠実に関する証拠の収集を重視し、権利者の権利濫用を理由として合理的な支出の賠償を請求するか、別途提訴して悪意による知的財産権訴訟から受けた損害の賠償を相手方に要求するかを状況に応じて選択し、相手の訴権濫用行為に対して反撃することができる。


[1] 梁慧星:『信義則と不足補充』、『法学研究』、1994年第2期。

[2] 梁慧星:『法学』、第323ページ。

[3] 『中華人民共和国民法典』第百二十三条の規定に基づき、知的財産権には以下が含まれる。(一)作品;(二)発明、実用新案、意匠;(三)商標;(四)地理的標識;(五)営業秘密;(六)集積回路の配置設計;(七)植物の新品種;(八)法律で定められたその他の客体。本稿では、主に特許法、商標法、著作権法の三つの主要な知的財産権に関する部門法について紹介する。

[4] 史尚寛:『債務法総論』、1978年台北五刷、319ページ。

[5] 徐国棟:『民法基本原則解釈』、中国政法大学出版社1992年版、78ページ。

[6] 易継明:『知的財産権分野における権利濫用禁止原則の適用』、『中国法学』、2013年第4期。

[7] 『中華人民共和国商標法』(2001年改正)第31条の規定により、商標出願は、他人の既存の先行権利を損なってはならず、他人が既に使用し、かつ一定の影響力を有する商標を不正な手段により先取り的に出願してはならない。第41条の規定により、登録済みの商標が本法第10条、第11条、第12条の規定に違反している場合、又は詐欺手段又はその他の不正な手段により登録を取得した場合には、商標局が当該登録商標を取り消す。その他の組織又は個人は、商標評審委員会に当該登録商標の取消を宣告するよう請求できる。

[8] 北大法宝:『商標法改正案草案に対する一部専門家の意見』、https://www.pkulaw.com/protocol/689e02c29528b63891d0c6b3aed56ba1bdfb.html、最終アクセス日:2024年4月1日。

[9] 国家知識産権局:「【意見募集】『中華人民共和国特許法改正案草案(意見募集稿)』に関する説明」、https://www.cnipa.gov.cn/art/2015/4/1/art_317_134082.html、最終アクセス日:2024年4月2日。

[10] 李揚:『著作権法改正案草案著作権濫用条項印象、推測と提案』、『知産財経』公式アカウント、https://mp.weixin.qq.com/s/P-4ZodiKR-O-Evex5rLhUQ、最終アクセス日:2024年4月2日。

[11] 李宗輝:『知能時代<著作権法>が信義則を規定する必要と展開―ChatGPTによる思考』、『北京連合大学学報(人文社会科学版)』、2024年1月第22巻第1期。

[12] 張玉敏:『商標法における信義則』、『知的財産権』、2012年第7期。

[13] 芮文彪、凌宗亮:『新<商標法>信義則の本質及び司法適用』、『電子知的財産権』、2015,1。

[14] 『中華人民共和国特許法実施細則(2023改正)』第50条初歩審査、第59条実質審査及び第69条無効審判請求の理由を参照する。

[15] 『特許出願行為を規範化する規定』第2条:特許出願を提出又は代理する場合、法律、行政法規及び部門規則の関連規定を遵守し、特許法の立法趣旨に従い、信義則を厳守し、真実の発明創造活動を基礎とし、虚偽を弄してはならず、『中華人民共和国特許法実施細則』第11条の規定に違反して異常な特許出願行為を実施してはならない。

第3条:本規定でいう異常出願行為には以下のことが含まれる。(1)提出された複数の特許出願の発明創造内容が明らかに同一であるか、又は実質的に異なる発明創造の特徴や要素が簡単に組み合わせて形成されたものである場合。(2)提出された特許出願に発明創造内容、実験データ又は技術的効果をでっち上げ、偽造、変造し、又は先行技術や先行意匠等を盗作、簡単に置き換え、寄せ集めるなど類似する状況がある場合。(3)提出された特許出願の発明創造内容は主にコンピュータ技術等を利用してランダムに生成されたものである場合。(4)提出された特許出願の発明創造が、明らかに技術改良、設計の常識に合致せず、又は劣化、積み立て、保護範囲を縮小する必要がない場合。(5)出願人が実際の研究開発活動なしに複数の特許出願を提出し、かつ合理的な説明をすることができない場合。(6)実質的に特定の組織、個人又は住所と関連する複数の特許出願を悪意をもって分散、前後又は異なる区域で提出した場合。(7)不正な目的で特許出願権を譲渡、譲り受け、又は発明者、設計者を虚偽に変更した場合。(8)信義則に違反し、特許業務の正常な秩序を乱すその他の異常な特許出願行為。

[16] 『特許審査指南』第一部分第1章第7.9節に規定の特許法実施細則第11条による審査、第2章第5節に規定の特許法第5条や第25条及び特許法実施細則第11条による審査、第3章第6.3節に規定の特許法実施細則第11条による審査、第2部分第1章第5節に規定の特許法実施細則第11条による審査、第4部分第3章第4.1節に規定の審査範囲等を参照。

[17] 中国法院網:『知的財産権裁判機能を十分に発揮し、知的財産権強国の建設のためにより良い役割を果たす-最高人民法院の関係責任者が知的財産権法廷及び国家レベルの知的財産権事件の上訴審理メカニズムに関する記者の質問への回答』、https://www.chinacourt.org/article/detail/2024/02/id/7812013.shtml、最終アクセス日:2024年4月7日。

[18] 『特許権侵害紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高人民法院の解釈』第6条を参照してください。特許出願者、特許権者が特許権付与又は無効審判手続において、請求項や明細書の修正又は意見陳述を通じて放棄した技術方案について、権利者が特許権侵害紛争事件においてさらに同技術案を特許権保護範囲に組み入れる場合、人民法院は支持しない。

[19] 『商標権権利付与と権利確定行政事件の審理における若干の問題に関する最高人民法院の規定(2020修正)』第1条を参照してください。商標権利付与と権利確定行政事件とは、相手方又は利害関係者が国家知識産権局の下した商標拒絶査定不服審決、商標異議不服審決、商標取消不服審決、商標無効審判審決及び無効審判不服審決等に対してまた不服する場合、人民法院に訴訟を提起する事件を指す。

[20] 最高人民法院(2015)知行字第116号行政裁定書を参照。

[21] 最高人民法院(2014)民提字第24号民事判決書を参照。

[22] 『異常特許出願の典型事例』、国家知識産権局の公式アカウントに掲載され、https://mp.weixin.qq.com/s/OZP0KMNeAukFOOaav9IJkQ、最終アクセス日:2024年4月3日。

[23] 最高人民法院(2022)知民終1861号民事判決書を参照。

[24] 最高人民法院(2022)知民終139号民事判決書を参照。

[25] 最高人民法院(2022)知民終124号民事裁定書を参照。

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