🔭コラム:内陸国の悩み…適切な知財政策が重要な鍵となるか(ミルショド)

はじめまして、今回のコラムを担当させていただきます早稲田大学法学研究科博士科程2年のミルショドと申します。日本であまり知られていない国ウズベキスタンからの留学生です。今回こちらで投稿させていただくのは初めてなので、本コラムでは紹介のような形で母国の重要な問題を取り上げ、検討を行いたいと思います。ウズベキスタンは中央アジアの真ん中に位置し、世界で2カ国しかない二重内陸国の一つである(もう一つは西ヨーロッパのリヒテンシュタイン)。まず、内陸国とは、海岸を持たない国である。現在そのような国は49カ国も存在する。 さらに、内陸国の中には二重内陸国というのがある。それは、国境を接する国も内陸国であり、つまり少なくとも二つの国の国境を超えないと海に出ることができない国のことである。海洋に直接アクセスできないことは経済的な面から見て非常に不利であり、スイスやオーストリアと言った西ヨーロッパ少数の国を除けば、内陸国の殆どは発展途上国である。 内陸国の場合は、経済発展にとって欠かすことのできない貿易が隣国の政治的状況に左右され、さらに高い輸送費用が負担となる。中央アジア諸国の中で人口が最も多いウズベキスタンは豊富な天然資源を有するとは言え、その埋蔵量は隣国のカザフスタンほどではなく、そして人口増加に伴い、失業率が深刻化し、独立当初から製造業の推進に取り組んできた。しかし、農業品を含め製造された製品の輸出が困難になっている。そこで、内陸国でありながら先進国の中に位置付けられるオーストリアやスイス等を見ると、どちらも製造業の高度化が進んでおり、その他にも金融業や観光業と言ったサービス産業が発達している(西ヨーロッパの内陸国をアフリカやアジアの他の内陸国から相違させる地理的(領土は小さく隣国も同じく先進国であること)及び歴史的要因はあるが、それらについてここでは深入りしない)。特に、毎年発表される「グローバル・イノベーション・インデックス」において7年連続で1位を占めてきているスイスの制度から学ぶべきところは多い。従って、輸送負担が重いウズベキスタンにとって現在の輸出品目を高付加価値のある商品に変えていく方法しかないと考えられる。高付加価値の商品を作るために技術が要る。その技術を持っている企業が直接投資を行える適切な環境整備が重要になってくる。従って、特許制度を中心に知財制度の改革が最重要な課題ではないかと思われる。去年の政権交代後、隣国との関係改善及びイノベーション経済特区の設置と言った前進的な改革は始まったものの、まだ残される課題は多い。発展途上国における知的財産権保護の強化に関してその経済的影響については意見が別れるが、私はその議論が内陸国についてであれば、保護強化は必要不可欠であると考える。最後に日本についても言及しておきたい点が一つある。勝手ながら日本とウズベキスタンの一つの共通点を感じてしまう時がある。それは一言で言うと比較的不利な地理的位置である。つまり、日本は天然資源に貧しく、自然災害が多い国であり、ウズベキスタンは海洋から遠く離れている(現在の領土はソビエット連邦の社会主義化政策の一環として人為的に作られたものであるという説はここでは議論しない)。しかし、日本の場合はその不利な地理的位置によって強い国民性が作られ、結局技術大国となったが、ウズベキスタンについてはまだ何とも言えない段階である。従って、不利な地理的位置がきっかけとなり、そこから技術発展が生まれてくることを期待したい。_      Mirshod Kuchkorov (RC)

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